タイトルにある、「ショーファードリブン」という言葉を聞いたことはあるだろうか?
ショーファードリブン(chauffeur-driven)とは、企業のオーナーや政府の要人といったVIPを乗せ、専門の運転手がドライブするという高級車のことです。
「ショーファー」とはお抱え運転手という意味で、かつては貴族などの使用人として屋敷に住み込み、馬車の運転から馬の世話、馬車のメンテナンスを一手に引き受けていたことに由来します。
現在のショーファードリブンを定義するなら、オーナーの座るリアシートの快適性が最優先されたドライバーズカーとは対局のクルマを意味し、その究極はストレッチリムジンと呼ばれるホイールベースを伸ばしたセダンの形となる。
このような、ショーファードリブンとして日本を代表するクルマといえば「センチュリー(CENTURY)」だ。
今回は、普段じゃ乗る機会が多くないであろう、トヨタ センチュリーについてお伝えする。
センチュリーの歴史
初代センチュリーは、1967年に発売を開始していて、トヨタグループの創設者である豊田佐吉の生誕から100年であることに由来して、車名にセンチュリー(世紀)という名称が採用された。
主に日本国内の官公庁・企業などでの公用車・社用車(役員車)の利用を想定し、後部座席の広さや乗降のしやすさなど、快適性に重きを置いた作りにすることで乗客をもてなす設計がとられており、御料車としても使用されている。
基本として日本国内専用車種であるが、アジアやヨーロッパに対して少数の輸出実績があり、香港では董建華初代特別行政区行政長官が、1997年の就任時にトヨタ自動車から特別に贈られたセンチュリー(ナンバープレートに香港特別行政区区章が飾られた)を公用車として常用していた。
1998年には、主に日本政府の在外公館(在仏・在中国日本大使館など)向けとして、右側通行に対応する左ハンドル仕様が100台ほど生産・販売された過去をもつ。
現行型センチュリーについて
3代目となる現行型センチュリーは2018年にフルモデルチェンジし、先代モデルが1997年~2017年と20年ぶりのフルモデルチェンジとなった。
エクステリアデザインには伝統と品格を守りつつ、「匠の技」を生かしたものとなっていて、あえて傾斜を立てた重厚なクォーターピラーにより後席の存在感を強調するなど「几帳面」と呼称されるキャラクターラインを採用している。
同時に一目でセンチュリーと分かるデザインでもあり、初代モデルからのアイデンティティーを継承している。
なお、「几帳面」の表現はプレス加工だけで出せないため、最終的には手作業で調整している。
V8 5.0Lエンジンによる余裕の動力性能にハイブリッドシステムによる高い燃費性能
センチュリーに搭載されるエンジンは、ハイブリッド専用のV8 5.0Lエンジンを搭載し、発進・加速時には高出力モーター+パワーコントロールユニットの働きにより、豊かなパワーと力強いトルクを静かに発揮します。
後席の静粛性を高めるためにハイブリッドバッテリーの冷却用吸気口の位置を変更し、ショーファーカーのための独自の技術を駆使している。
先代モデルでは、V12 5.0Lエンジンを採用していたが環境性能や走行性能、静粛性などを追求しトヨタが世界に先駆けて進化、熟成を図ってきたハイブリッド技術の結晶とも呼べるハイブリッドユニットを採用した。
ショーファードリブンとしての基本、妥協のない室内の静粛さを実現
ドアが閉まった瞬間から、外界の喧騒から遮断され成熟に包まれるセンチュリーの室内は、膨大な時間と手間をかけて吸・遮音材の最適配置や風切り音対策などを徹底している。
その一例が、熟練の専任作業者による「音止め」がある。
エンジンルームや路面からの音、風切り音や雨音など室内に入ってくるあらゆる音を低減するために、大量のサイレンサーやアスファルトシートなど様々な吸・遮音材を手作業によって丁寧に貼りつけている。
走行中に生じるこもり音には、アクティブノイズコントロールにて対応し、車内に伝わるエンジンのこもり音を逆位相の音を発することで打ち消す。
熟練の技と先進技術の組み合わせにより、圧倒的な静粛性を実現している。
ショーファードリブンに相応しい、至上の乗り心地
走り出したことに気づかないほどの滑らかな動きや、走行中も問題なく新聞を読めるほどの安定感を実現している。
それには、構造用接着剤によるボディ剛性の向上をはじめ、サスペンションにはサスペンションアームやブッシュ、マウントなどのゴム部品ひとつにまで、最適なチューニングを施している。
また、足元の静粛性を図るために、アルミホイールにもタイヤが発するノイズを低減するノイズリダクションアルミホイールを採用している。
エアサスペンションには、十分なエアチャンバー容量を確保することでショーファーカーに相応しい乗り心地を実現している。
また、オートレベリング機能により常に車高を一定に保ち、安定した走りに貢献している。
贅を尽くした、後席の機能一覧
日本を代表するショーファーとして贅沢に造りこまれた後席の機能を紹介する。
後左右席パワーシート/後左席用電動オットマン(フットレスト機能付)
後左右席には、電動で好みのポジションにきめ細かく調整できるパワーシートを採用している。
リクライニング&スライドの寛いだ姿勢で書類やテレビを見る際には、上体だけ起こすことも可能となっている。
左後席には、ビジネスからリラックスまでシーンに合わせた3つのおすすめモードを設定したプリセットポジション機能を搭載し、さらには助手席の位置と角度を電動で調整することで、オットマンを好みのポジションに設定できる。
また、オットマンはフットレストとしても使用可能となっている。
降車時には、リクライニングしていた後席(左右)がドアオープンに連動して自動で復帰します。
リフレッシュシート(後左席)/シートベンチレーション(後左右席)
左後席には、背もたれ面に内蔵したエアブラダーと呼ばれる空気袋を膨張させることで肩から腰までを押圧し、心地よい刺激が得られるリフレッシュシートを採用している。
さらには、様々な季節にも快適に過ごせるシートベンチレーションを採用し、冬期にはシートヒーター、暑い夏期にはシート表皮の熱気を吸い込むことで清涼感をもたらすベンチレーション機能を設定し、心身のリフレッシュに役立てる。
11.6インチリヤシートエンターテイメントシステム
臨場感ある音と映像美で、走るコンサートホールと言わんばかりのオーディオシステムを搭載。
原音忠実・立体空間再生をコンセプトにした12chオーディオアンプ・20スピーカーのトヨタプレミアムサウンドシステムは、後席に最高のリスニングポイントとなるよう20個のスピーカーを最適配置し、緻密にチューニングしている。
11.6インチ大型ディスプレイは、タワーコンソールに設置し高精細で視認性に優れています。
モニターに映る映像の明るさを自動で判別し、映像のコントラストを常に最適化する液晶AI機能を導入している。
アクセサリーコンセント(AC100V・100W)
タワーコンソールにはAC100V・100Wのアクセサリーコンセントがついているため、スマホなどの充電にも利用できる。
リヤドアカーテン&電動式バックウインドゥカーテン
後席への日差しを遮る、リヤドアカーテン&電動式バックウインドゥカーテンを装備し、車内を常に快適な環境に保ちます。
イージークローザー(全ドア・トランク)
半ドア状態から静かに確実にドアを閉める、イージークローザーを設定しているので、半ドアに気づかず車を離れる心配はもうありません。
フロントコンソールモジュールスイッチ
後席に乗る方のために、運転席に座りながら助手席のシート位置調整や、後席のオットマンを戻すなど、6つのスイッチで助手席・後席の環境が調整可能となっている。
選べる2種類のシート生地
触感からクッション性まで贅を尽くしたシートには、上質な肌触りのウールで織り上げたジャガードモケットのウールファブリック仕様と、傷のない部分を厳選して柔らかく仕立てた本革使用の2タイプ用意。
クッションにコイルばねを採用することで、高級ソファの座り心地を実現するとともに、長時間座っても疲れにくい姿勢を保持します。
おもてなしに備える大容量のラゲージルーム
センチュリーのラゲージルームには、ゴルフバッグが4個収納できる484Lの容量を確保しています。
贅沢を尽くしすぎたセンチュリーは、やはり日本のフラッグシップカーだった
ここまでセンチュリーについてお伝えしてきたが、一般人からは考えられないラグジュアリーな空間から周りを圧倒する。
エクステリアデザインにも、誰が見てもセンチュリーだと分かる様に先代から大幅な改良はしていないように見えるが、レンズ類やフォルムに最先端な技術が盛り込まれていることが、分かる。
トヨタ社長の豊田章男氏は新車発表の際「センチュリーのGRMN仕様を作りたい」と話し、実際に2018年9月にこれを公道でお披露目した。
一般的にセンチュリーは高所得者がドライバーを雇って運転するものというイメージが強いが、豊田はこれを自分で運転している。
ただし、これは現時点ではあくまで社長専用車であり、市販の予定については語られていないほか、スペックについても明らかにされていない。
2019年11月10日の第126代天皇徳仁の祝賀御列の儀に合わせ、ロールスロイス コーニッシュⅢに代わるパレード用オープンカーのベースとして選定された。
改造点は屋根の撤去とCピラーの切断、シートを白色の本革とし後部座席を若干高くして背もたれの角度を25度に固定している他、剛性確保のため車体を補強しているとされ、予算は8000万円となっている。
この様に、トヨタ社長が自分で運転していたり天皇のパレードに使われるなど特別感があるクルマである事は間違いない。
筆者は、働いていた中古車屋で仕入れたセンチュリーの後席に座ったことがあったが、柔らかすぎず硬すぎないシートでこれは長時間乗っても疲れないシートだなと感動したことがありました。
現行型になり、さらに磨きがかかったであろうセンチュリーのシートに座ってみたいですね。
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