各自動車メーカーで起きている「半導体不足」による納期の遅れや受注の停止。今さら聞けない「半導体」ってどんなもの?なぜ半導体不足に陥っているのか?

車の情報

7月25日、トヨタ自動車は多目的スポーツ車(SUV)「ハリアー」の現行モデルについて、既に受けた注文を取り消しているほか、新規注文の受付を停止したことを、同社の広報担当が明らかにしたという報道がされました。

トヨタ自動車のみならず、全世界的に新車の供給が不足している状態が続いていますが、このような事が起きている背景には、新型コロナウイルス感染拡大に伴う中国のロックダウンや、半導体不足などの影響で、計画通りに生産ができないことが挙げられます。

また、自動車業界のみならず、あらゆる業界で「半導体不足」が影響しており、ニュースや新聞などでよく見かけることが多くなってきました。

この半導体ですが、半導体とは一体どの様な物なのか?半導体不足に陥った理由は?と気になることが、浮かび上がってきます。

今回は、全世界で拡大している「半導体不足」や「半導体」そのものについて、自動車業界に関連しつつお話しします。

今さら聞けない「半導体」とは?

半導体不足 マイクロチップ

そもそも、半導体っとは何なのか?

簡単にまとめると、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を帯びる、シリコンなどの物質や材料のことを言います。

「導体」と「絶縁体」の半分ずつの性質を持つことから、「半導体」と呼ばれるのです。

自動車に限らず、生活の身近にあるスマートフォンや、デジタルカメラ、オーディオ機器など電源や電池によって動くものには、すべて半導体が使われているのです。

さらにイメージをしやすくすると、半導体は「マイクロチップ」とも呼ばれ、あらゆる電子機器の「頭脳」的な働きをしています。

日常生活においても、半導体の使用用途は数え切れないほど多く存在していますが、自動車においても自動運転やデジタル化などの技術の進歩によって、半導体が欠かせなくなっています。

半導体の需要が多くなっている背景

半導体不足 リモート飲み
リモート飲み(イメージ)

新型コロナウイルス感染拡大が始まった頃から、世界的に「リモートライフ」への移行が進み、家庭においては自宅などから仕事をしたり、学校の授業を受けたり、いわゆる「リモート飲み」などの交流においても、PCやスマートフォンなどの電子機器の需要が一気に高まりました。

このような家電製品から需要は高まり、その後には人との接触機会を減らす移動手段としてもクルマの需要も高まっていくなど、自動車業界においても半導体需要の過多が見られるようになりました。

半導体需要が高まり、供給側の生産が追いつかなくなってしまった

半導体不足 ファブ
半導体施設

半導体の需要が高まる中、供給側の体制が整わないことが分かってきました。

新型コロナウイルスの感染拡大前には、「ファブ」と呼ばれる半導体施設における装置は、既にほぼフル稼働状態にあり、生産拡大する能力がなかったのです。

しかも、多くのファブでは最先端のチップを生産するために、新たな生産ラインにシフトしていたため、自動車や家電製品に使われるシンプルなチップの需要に対応できなかったことが挙げられます。

あらゆる産業界の中でも、半導体への依存度が高まっている自動車業界が一番の影響を受けており、アメリカのフォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)をはじめとする多くの自動車メーカーは、一時的に工場の閉鎖を余儀なくされ、フォード社とGM社はそれぞれ20億ドル以上の収益削減を見込んでいることとなりました。

さらに、半導体の工場が地理的に分散していなことから、製造上での問題を大きくしています。

世界的に半導体チップの供給を求められているのに関わらず、半導体の87%は台湾、韓国、中国で生産されており、世界のチップの54%は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社によって製造されています。

限られた半導体チップの供給と、需要過多となったことから、サプライチェーンの混乱を避けることができなくなったと言えます。

半導体不足となった3つの理由

新たな半導体需要が発生したこと

半導体不足 リモートライフ

家電製品の需要が増えたことで、新たな需要に対応するサプライチェーンが十分な量のチップを作るのに苦労しており、注文が山積みとなり、受注残が増えていきました。

また、フォードのような自動車メーカーは、自動車を生産するために必要なチップの量を予測し、チップメーカーのいずれかに事前に発注しなければなりませんが、現在は民生用半導体チップの製造がメインとなっている中、手に入れるのには時間を要してしまいます。

一般家庭においても、大きく生活様式が変わってしまったことから、学校ではノートパソコンやタブレットを使ったバーチャル学習が導入され、家にいる時間が増えたことでテレビやゲーム機などのホームエンターテインメントの需要も高まりました。

これらに加えて、5Gの普及やクラウドコンピューティングの継続的な成長により、自動車メーカーが手放した分の生産枠はあっという間に消費されていくことになりました。

新型コロナウイルス感染拡大による塩田港の閉鎖

半導体不足 塩田港
塩田港

新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国深センにある「塩田港」の閉鎖による影響も大きいものになっています。

世界の電子機器の約90%を、この塩田港を経由するため、閉鎖されることにより出荷することができなくなってしまい、数百隻のコンテナ船が停泊している状態になってしまいました。

港が再開されても、出荷を待つ商品が積み重なったことから、スムーズな供給とはならなかった為、輸送のサプライチェーンの多くの部分では、この蓄積された情報や、発生している労働力の不足を処理する能力がなく、サプライチェーンはさらなる危機に陥っているのだ。

パンデミックによる世界的混乱

半導体不足 コロナ

新型コロナウイルス感染拡大のパンデミックによって、多くの企業が経済の長期的な打撃を想定して半導体チップの発注をキャンセルすることになりました。

しかし、半導体の発注キャンセルは自動車業界にとっては誤った判断だったため、不足が加速していきました。

特に自動車メーカーが注文をキャンセルしたことで、半導体チップメーカーはパンデミックによる爆発的な需要に対応するために、自動車用ではなく民生用の半導体チップを作るように工場を変更しました。

これにより、自動車用の半導体チップが不足してしまう原因になったのです。

半導体不足における自動車業界への影響とは

半導体不足 フォード工場

半導体不足によって、自動車産業も大きな打撃を受けることになりましたが、米国メーカーの今年の自動車生産台数は少なくとも150万台から500万台は減少すると言われています。

フォード社とGM社はすでに生産を制限するなどの対応をとっており、テスラは生産レベルを維持するために自社ソフトウェアを修正して代替チップをサポートするなど、対応に追われているのが現状です。

自動車産業における部品調達の契約は、他の産業とは大きく異なり、他の産業では長期の拘束力のある契約が多く、半導体サプライヤーには6ヶ月から12ヶ月をはるかに超える発注書が出されるのに対し、自動車産業のサプライチェーンは複雑でアウトソースが多いため、半導体チップ調達のコミットメントサイクルは短期化する傾向にあり、特に数週間から数ヶ月程度の拘束力のある購入契約が一般的となっているのです。

その結果、自動車産業は以前から安定した需要があると評価されていましたが、半導体メーカーは現在、他の即効性のある産業から、よりオーソドックスで長期的な契約を結んでいます。

自動車のサプライチェーンでは、手持ちの在庫を少なくし、効率を上げることのできるジャストインタイム生産方式が広く活用されているなか、平時であれば在庫を減らすことは経済的にもメリットが高いが、予期せぬ欠品が発生した場合には、サプライチェーン全体の混乱を招くことになります。

多くの企業では、2020年と2021年のチップ不足を予想していなかったため、危機を乗り切るための在庫は非常に限られていたと考えられます。

半導体不足の解消時期とは?

ガートナージャパンが発表した「半導体不足は2022年第二四半期までは続く」という予測から1年経った現在でも、半導体不足は解消されていません。

一般的な第二四半期の9月まではまだ時間がありますが、半導体不足の解消にはさらに時間を要する可能性は大いにあると思います。

インテル社CEOのパット・ゲルシンガー氏に、「半導体不足はいつまで続くのか」という質問を投げかけたところ、「半導体業界の供給不足は2024年まで続く」という返答になりました。

一方で、米国の半導体製造装置産業の調査会社「VLSI Research」のCEOであるダン・ハッチェソン氏は「2024年には半導体不足は過剰生産が起こる可能性がある」と過去に発言していることから、順調に回復シナリオを辿ると、2024年には半導体不足から一転、半導体供給過剰になることを説明している。

これは、2024年にならないと分からないことだが、良いバランスで回復するのを願いたい。

さいごに

半導体不足の裏には、上述したような理由があったからなのですね。

やはり、主に新型コロナウイルスの影響により、貿易や工場などが稼働をストップしてしまったことから、この様な事態に陥った原因となっているでしょう。

未だ、全世界的にコロナウイルスによる感染拡大が収束する兆しが見えませんが、徐々に経済が回り始めているので、全てにおける産業が明るい未来へと向かっていくことを個人的には願っています。

この記事の参考URL:https://souken.shikigaku.jp/11771/#%E5%8D%8A%E5%B0%8E%E4%BD%93%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F

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