誰もが一度は絶対に見たことのある救急車だが、実際に救急車ってどんな車種が走っていたり誰が所有してたりどんな機器が載っているのか?はたまた、救急車の値段はいくらなんだろう?と、救急車がどのようなものなのかまでは、考えたことがあまりないかもしれません。
救急車マニアの方は、そんなことぐらい知ってるよって思う方もいらっしゃると思いますが、案外気にする事まで至らない方も多くいらっしゃるかと思います。
そんな知られざる救急車の中身について、今回はお伝えします。
救急車の所有者と、救急車の役割
救急車と言っても、一括りに同じモノとは言えない状況があり、所有者や管轄している部署が違う事で、救急車の使い方なども異なってくる。
地方公共団体(消防)が所有するもの
日本の地方公共団体(消防)における救急自動車は総務省消防庁が管轄しており、他省庁管轄の救急車と比べて出動件数が最も多い。
構造や設備が管轄している総務省消防庁により定められており、例として救急隊員3人以上及び傷病者2名以上を収容でき、4輪駆動車である事等が定められている対象だ。
普段一般道路を走行している大部分の救急車は119番通報により出動した地方公共団体(消防)の救急車である。
病院などの医療機関が所有するもの
医療機関の救急車は、病院間の転院搬送などに使用されドクターカーなどと同じく、厚生労働省が管轄している。
自衛隊が所有するもの
自衛隊の救急車は防衛省が管轄し、通常時は駐屯地や基地内で発生した傷病者を医務室または病院へ運ぶために使われている。
大規模災害などの際に地方公共団体の首長からの要請を受けて「災害派遣」として出動するのは1トン半救急車と呼ばれる車両で、大きな赤十字標章が付いたトラックのような外見であるが関係法令に適合した正式な日本の救急車の一つである。
空港の検疫所が所有するもの
空港(検疫所)の救急車は、厚生労働省が管轄しており、海外からの入国者や帰国者等が感染症を罹っていた場合などに使用する。
競馬場や大型サーキット・大型テーマパーク、民間の大規模工場・発電所・石油コンビナートが所有するもの
競馬場や大型サーキット・大型テーマパーク、民間の大規模工場・発電所・石油コンビナートなどでの救急車は、敷地内で発生した傷病者を自衛消防組織(自衛消防隊)として医務室や近隣の病院へ搬送する為に所有している。
単純イメージで、国の所有物であると思いがちだが、国の所有物でも管轄されているところを細分化されていることが分かります。
むしろ、民間でも所有することが可能なんですね。
救急車にも種別がある
一概に救急車と言っても、車両の大きさや搭載している医療器具についても種別によって異なってくる。
どの様な救急車があるのか、掘り下げてみる。
高規格救急自動車
日本の消防で現在主力の救急車両であり、救急隊員3名のうち最低でも1名の救急救命士が乗務し運用されている。
従来型や外国製などを参考に1980年代後半から基本研究・開発がスタート。
当時主力の国産2B型(後述)では車内患者室が狭く、新しく増える医療機器や医療器具を置くと救急隊員の活動が制限されてしまうことが判明した。
3B型救急車(後述)は医療機器や医療器具を置くスペースはあるものの、2B型と比較して小回り性能と操縦安定性が低く、エンジンの騒音、車内の振動対策などが必要と分かった。
また、2B型・3B型共通して医療機器などを積載する事により新しく増える重量に対してエンジン出力が不足している点や室内高が足りない点など、ベース車両自体を大幅に改造・改良しなければ要求する性能を満たせないことが分かったのである。
そこで、保安帽をかぶった救急隊員が車内で屈まず自然な姿勢のまま迅速に救命処置ができる室内高を持ち、尚且つ医療機器や医療器具などを無理なく収納できる室内幅をもった高性能な救急自動車を1991年(平成3年)の救急救命士法施行にあわせて新規規格化したのが高規格救急自動車である。
2B型救急自動車
2Bとはツーベッドの略で、傷病者を仰臥位または背臥位の姿勢で搬送できるベッドを2名分有している救急車両であり、高規格救急車登場以降は「標準救急車」や「普通救急車」などと呼ばれている。
主に使われているところは、一般的な民間病院や陸上自衛隊駐屯地が所有している救急車は基本的に2B型救急車である。
3B型救急自動車
3Bとはスリーベッドの略で、傷病者を仰臥位または背臥位の姿勢で搬送できるベッドを3名分有している救急車両である。
日産 シビリアンなどマイクロバスをベースにした救急車で、1970年代から1990年代前半にかけて普及していたが、2003年6月の消防組織法上に緊急消防援助隊が正式に位置づけられ、緊急消防援助隊車両に対する補助金が義務的補助金として優先的に扱われるが、補助金の支給対象は救急車が災害対応特殊救急自動車、人員搬送用は2007年(平成19年)に規格化された消防車両の支援車III型で、3B型救急車は補助金支給の対象外であるため新たな需要はなく、製造メーカーでもカタログ落ちしているため新たに導入された3B型救急車は近年確認されていない。
大型救急自動車
マイクロバスをベースにした車両で、日産 シビリアンやトヨタ コースターがベース車両として主に使われており、用途別の架装タイプが下記の4つに分けられる。
1.高度な医療用機器を積載し三次救急医療機関で使用されるドクターカータイプ
2.新生児患者を搬送するため大型保育器などの医療用機器を積載している新生児用救急車(ドクターカー)タイプ
3.多くのベッド(担架)を積載又は20名程度の座席を装備し、事故や災害で複数の負傷者が発生した時に使用する多数負傷者搬送用タイプ
4.東京消防庁に配備されている一類・二類感染症患者兼特殊災害傷病者搬送タイプ
なお、新生児搬送用大型救急車は、総合周産期母子医療センターに指定されている総合病院等に、多数負傷者搬送用の大型救急車は空港、高速道路、新幹線の駅を管轄する自治体等に配備されている。
軽救急自動車
規模の小さい離島や高規格救急車、2B型救急車が進入できないような狭隘道路地域などで使用されており、軽ワゴン車をベースに救急車へ改造した車両で、狭隘道路地域における「高機動性」と、傷病者「搬送」の2点に特化した救急車である。
主に使われている、高規格救急車等が進入できない狭隘道路地域を管轄する地方公共団体(消防)で軽ワゴン車をベースに改造した救急車両「軽救急車」を運用できるよう2011年4月に総務省消防庁が救急車の規格基準を改訂した。
構造や設備の基準適用をしないことが出来るよう緩和され軽救急車が誕生し、以降全国各地で普及が進んでいる。
その他特殊な車両
京都市消防局では、市街地から遠く離れた一部の出張所に、患者搬送を目的とした「器材搬送車」と消防救急車を配備しており、器材搬送車のベース車両としてセレナやデリカスペースギア等のミニバンが用いられ、車内は前述の軽救急車と同様に狭く、搭載資器材は限られている。
これらの車両は京都市消防局では「救急車」ではなく「消防車」の扱いになるため、車体塗色は朱色に白が入ったものとなっている。
東京消防庁八王子消防署浅川出張所では、高尾山山頂まで走行する為トヨタ タウンエースをベースにした小型救急車が2017年(平成29年)4月に配備された。
それぞれ、使用用途だったりその地域の地形に合わせた救急車が存在するんですね。
高規格救急車に搭載される主な医療用資器材
救急車といえど、有限のスペースにどのくらいの医療器などが積載されているのか?あまりに少なすぎても心もとないし、多すぎてもそれを使いこなすことが出来るのか?
そんな疑問に、どのような医療器具が載っているのか、お伝えする。
観察用資器材 | 聴診器、血圧計(自動式・タイコス式)、検眼用ペンライト、患者監視装置(心電図・脈波・血圧・血中酸素飽和度)等、傷病者のバイタルサインなどを測定するために使用する。 |
人工呼吸器 | バックバルブマスク・デマンドバルブ・自動式人工呼吸器等 |
自動式体外除細動器 | 電気ショックを与える医療器具で、心室細動や無脈性心室頻拍の致死的不整脈を治療するために使用する。 法改正により一般市民でも使用可能となったAEDと救急車に積載されるものと異なる点は、隊員自らが心電図モニターにより除細動の適応を判断し解析を行い除細動適応であれば通電する点である。 |
気道管理セット | 吸引器、喉頭鏡、マギル鉗子、開口器、経口経鼻エアウェイ等 |
搬送器材各種 | ストレッチャー(メイン、サブ、スクープ型など)・布担架等 |
感染予防用具 | プラスチックグローブ、マスク、防護衣類、ゴーグル等 |
脊柱固定用具 | バックボード、頸椎固定カラー、ストラップなど交通事故などの高エネルギー外傷で脊椎損傷の可能性がある患者に対し全身固定を目的として使用する。 |
外傷キット | 滅菌ガーゼ・タオル包帯・三角巾・空気膨張型副木等 |
救出用具 | サイドウィンドウを割る為のハンマー、シートベルトカッター、バール、トップマン鳶等で、これらで対応出来ない事案の場合は特別救助隊の支援を求める(通報で状況を聞き取った際に同時出動する事が多い) |
医療用酸素 | 10リットルボンベ×2~3本 |
特定行為セット | ラリンゲアルマスク、食道閉鎖式エアウェイ、気管チューブ、静脈留置針、輸液セット、アドレナリン(気管チューブとアドレナリンは医師の具体的指示を受けた「認定救急救命士」が使用できる。) |
毛布 | |
分娩セット |
以上のような、医療器具等が備わっておりあらゆる患者の状況におけても治療ができるセットが積載されている。
高規格救急車のラインアップと気になる価格は?
主に稼働している、高規格救急車はトヨタ ハイメディック(ハイエースベース)と日産 パラメディック(NV350キャラバンベース)と札幌ボデー トライハート(いすゞ エルフベース)の3車種が今現在の主力高規格救急車となっている。
それぞれのスペックをまとめます。
トヨタ ハイメディック(3代目)
乗車定員 | 8名 |
エンジン | 2TR-FE型 直列4気筒 DOHC 2,693cc 151PS |
駆動方式 | FR/4WD |
変速機 | 6速AT |
全長 | 5,600mm(リアステップ含む) |
全幅 | 1,895mm |
全高 | 2,490mm |
車両重量 | 2,480kg(2WD)/2,860kg(4WD) |
室内長 | 患者室内3,560mm |
室内幅 | 1,730mm |
室内高 | 1,850mm |
1,076万2,000円 | (2WD) |
1,105万6,000円 | (4WD) |
日産 パラメディック(3代目)
乗車定員 | 8名 |
エンジン | 2TR-FE型 直列4気筒 DOHC 2,693cc 151PS |
駆動方式 | FR/4WD |
変速機 | 6速AT |
全長 | 5,600mm(リアステップ含む) |
全幅 | 1,895mm |
全高 | 2,490mm |
車両重量 | 2,480kg(2WD)/2,860kg(4WD) |
室内長 | 患者室内3,560mm |
室内幅 | 1,730mm |
室内高 | 1,850mm |
1,456万9,200円 |
札幌ボデー トライハート(3代目)
駆動方式 | 4WD |
変速機 | 5速AT/5速MT |
全長 | 5,970mm(標準車)6,250mm(ロング車) |
全幅 | 2,080mm |
全高 | 2,850mm |
車両重量 | 5,1000kg |
室内長 | 患者室内3,700mm(標準車) |
室内幅 | 1,890mm |
室内高 | 1,850mm |
トライハートの価格は不明
以上のように今現在、高規格救急車として走っている3台のスペックとなっています。
そこまで、まじまじと見ている訳ではありませんがトヨタのハイメディックが断然見る機会が多い気がします。
さいごに
働くクルマの代名詞である救急車について、お話してきましたが深堀りしていくと救急車に関する様々な事柄がありましたね。
大きさだったり、用途別に分かれているところ、所有者の管轄が異なることなど、普段では知りえない事が沢山ありました。
何気なく走っている救急車ですが、やはりクルマを走らせていれば緊急状態の救急車には遭遇する機会は、少ないようで多いようで、筆者は個人的に結構、遭遇する機会が多く感じます。
緊急自動車は、その場の道路状況においてしっかりと譲らなければなりませんが、この譲る行為をうまく出来ない方が、たまにいらっしゃるのでかえって危ない場面や意味のない幅寄せなども見かけたこともあります。
皆さんもその場の状況を、広い視野で確認しどのようにすれば円滑に緊急自動車を譲ることが出来るか考えて、一番良い行動に出てくれればと思います。
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