自動車における「空力(空気力学)」とは、車両が走行する際に受ける空気の流れ(空気抵抗や揚力)を考慮し、車の形状や部品を最適化する技術や設計思想を指します。
空力性能の高い車は、燃費の向上、高速安定性の強化、静粛性の改善など多くのメリットがあります。
実際にクルマの走行中には、空気の流れから受けるさまざまな影響があり、それは前後、左右、上下(揚力)にかかる力に加え、ヨーイング(上下を軸として回転すること)、ロール(前後を軸にした回転)、ピッチング(左右を軸にした回転)などのモーメントがあります。
これを「空力特性(くうりきとくせい)」と呼び、気流の中に置かれている物体が、気流によって受ける力の総称とされています。
このような影響を改善することで、クルマの直進安定性や燃費の改善に繋がります。
今回は、空力特性に対する、空力改善装備について紹介します。
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空力特性に対策している装備とは?
エアロパーツ

最もポピュラーなアイテムと言えば、エアロパーツと言えるのではないでしょうか?
クルマの見た目の印象を変える、ドレスアップ効果の高いアイテムですが、実は空力性能を向上させる重要なパーツとも言えるでしょう。
主なエアロパーツとその役割を紹介します。
フロントスポイラー(リップスポイラー)
フロントスポイラーは、クルマのフロントバンパー下部に装着され、車体前面の空気を効率よく受け流し、車体下への乱気流の侵入を抑制します。
また、揚力(リフト)を抑えることで、前輪に加重がかかりやすくなるため、グリップ力や直進安定性が向上します。
さらに、エンジンやブレーキへの空気の流れを整える構造のものもあり、冷却効果の補助的な役割も果たします。
もちろん、デザイン性への影響もあり、見た目がスポーティになり、車の印象が引き締まります。
サイドスカート
サイドスカートは、自動車の車体側面、特に前後タイヤの間の下部(サイドシル部分)に装着され、車両の側面下部を覆い、空気の巻き込みを抑制するので、直進安定性や燃費性能に好影響を与えます。
また、路面からの飛び石や汚れの跳ね上げを抑える役目も果たし、車高が低く見えるため、スポーティかつ引き締まった印象になります。
リアスポイラー(リアウィング)
リアスポイラーとは、自動車のリア(後方)に装着され、空気の流れを整え、ダウンフォース(車体を路面に押し付ける力)を発生させて高速走行時の安定性を向上させます。
主な種類として、リップタイプ(小型で車体のラインに沿った形状)、ウィングタイプ(両端のステーで固定された大型タイプ。サーキット走行などで高いダウンフォース効果を発揮)、ダックテールタイプ(トランクの端を立ち上げたようなデザイン。クラシックカーや欧州車にも多い)、ルーフスポイラー(ハッチバックやSUVなどでよく見られ、ルーフ後端に装着されるタイプ。主に整流効果が目的)があります。
リアディフューザー
リアディフューザーは、車両の後方下部(リアバンパーの下)に装着され、車体下部に流れ込んだ空気をスムーズに排出し、乱流を抑制し、空気の流速差を利用して車体を地面に押し付け、高速走行時の安定性を向上します。
フィン状の構造が特徴で、空気が地面側から車両後方へ効率よく流れるようになり、空気抵抗を減らすことで、走行時のノイズや振動を軽減します。
ボンネットダクト
ボンネットダクトは、車のボンネット(エンジンフード)に設けられた空気の通り道(開口部)が取り付けられたもので、冷却性能や空力性能の向上、エンジンルーム内の温度管理など、主に機能性を重視して装着されますが、デザイン面でもスポーティな印象を与える重要なパーツです。
カナード
カナードは、フロントバンパーの両端に取り付けられる小型の翼状エアロパーツのことで、車体前方に空気の流れを当てて下向きの力(ダウンフォース)を生み出すことで、高速走行時のフロントの接地感や安定性を向上させます。
また、タイヤ周辺やサイドへの空気の流れを整え、空気抵抗の軽減やブレーキの冷却効果にもつながります。
タイヤディフレクター

タイヤディフレクターは、自動車のタイヤ周辺に取り付けられる空力制御パーツで、主にフロントバンパーの下部や前輪の前側に設置されることが一般的です。
タイヤハウス内に入る乱流を抑制し、空気の流れをスムーズになることで、全体の空気抵抗を削減し、燃費や走行安定性を向上させる効果があります。
また、タイヤやブレーキ周辺への冷却風の導入や排出に貢献したり、高速走行時のふらつき低減や直進安定性の向上に寄与します。
タイヤディフレクターは目立たない部品ながら、車両の空力性能やエネルギー効率の向上に大きく貢献しており、燃費規制やEV普及に伴い今後さらに多くの車種に採用される傾向があります。
エアカーテン

エアカーテンは、フロントバンパーの左右端(フォグランプ下など)に「インレット(吸気口)」を配置した空力制御技術で、空気はダクトを通ってフロントタイヤ外側に沿って空気を吹き出し、タイヤによる乱流を整え、空気抵抗の低減や燃費性能の向上、走行安定性の向上を目的としています。
見た目はシンプルでも内部に複雑なエアダクトが設計されており、空気の流れを緻密にコントロールしているのが特徴です。
エアカーテンは「見えにくい空力パーツ」ですが、燃費規制の強化やEV普及の流れの中で重要性が増しています。
電動車やハイブリッド車では必須の空力技術として今後も搭載車が増えていくと予想されます。
ボルテックスジェネレーター

ボルテックスジェネレーターは、車体に沿って流れる空気の流れをコントロールするための空力デバイスで、特に空気の流れが乱れやすいリアセクションやピラー周辺で、安定性と効率を支えています。
メーカーによる純正設計のものは機能性が高く、走行性能や燃費改善に確実に貢献しています。
小さなフィン状または突起物のような形状で、設置位置については主にルーフ後方の左右(Cピラー周辺)、一部車両ではリアスポイラーやミラー根元、ボンネット前端にも設置されることがあります。
近年はアフターパーツとしても注目されており、DIYで取り付ける人も多いですが、本来は風洞実験やCFD(流体解析)に基づいて設計されるものであるため、 位置がズレると効果が出ない、むしろ空気抵抗が増えることもあるので、注意が必要です。
リヤアーチフィン

リヤアーチフィンは、後部のホイールアーチ(タイヤの上部を覆うフェンダー部分)に装着する、小さな羽根状の部品になります。
特に後輪周りは乱流が発生しやすいが、フィンにより空気の流れを整えます。
整流効果により、高速走行時や横風を受けたときのふらつきを抑え、また空気の流れを車体下方向へ誘導し、タイヤの接地安定性に貢献します。
一部アフターマーケット製品では「整流フィン」「リヤディフューザーフィン」「エアロスタビライジングフィン」などと呼ばれ販売されていることもあります。
ただし、形状や取付位置が適切でないと効果が薄くなるか、逆効果になることもあるため注意が必要です。
リヤアーチフィンは目立たないながらも、走行性能や燃費、操縦安定性に貢献する重要な空力パーツです。
空力を極めたいユーザーや高速走行が多いユーザーには、見直したいパーツのひとつといえるでしょう。
さいごに
クルマの空力改善は、車両の燃費向上・走行安定性・高速性能の強化に大きく寄与します。
空力パーツは見た目だけでなく機能面でも効果的、燃費改善から運動性能まで、幅広い領域にメリットがあります。
ただし、走行性能に直結するため、純正・社外エアロともに「バランス重視」が重要で、装着時は品質・取付精度が重要となっています。
MuuMuu Domain!
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