クルマのEV化の加速が止まらない。
欧州では、2035年から新車の販売をゼロエミッション車(温室効果ガスを排出しない車)に限定する法案を可決することで、EV化に移行していくヴィジョンが見え始めている。
既に何年も前から、欧州では将来的に内燃機関を持つクルマについて廃止する流れとなり、新たにラインアップされる車種についてもEV車がよく見られるようになった。
逆に、日本国内メーカーのEV車のラインアップは欧州メーカーに比べて少なく、今後EV車についてラインアップを強化しざるを得ない状況となっているのは確かだ。
そんな中、世界第2位のEVメーカーである中国BYDの日本法人であるBYDジャパン(ビーワイディージャパン)が、7月21日に日本乗用車市場参入発表会を実施しました。
ひとまず、3車種を発表し2025年までに100店舗のディーラー網の構築を目指すとだけあり、日本市場参入は本気と見える。
今回は、BYDジャパンの日本参入についてお話します。
BYDとは、どういった企業なの?
BYDとは中国、深センにて1995年に創業し、ITエレクトロニクス、自動車、新エネルギー、都市モビリティと4つの領域で事業をグローバルに展開している企業です。
創業時のバッテリーメーカーとした背景から、バッテリーのみならずモーターや制御装置など、EV車のコア技術の開発から、製造まで自社で可能としているのが強みだ。
既に、中国国内でEVやPHEVといったNEV(New Energy Vehicle)の販売台数で、9年連続1位を獲得し、2021年度のグループ年間売上高は335億ドル(約4兆6000億円)となっており、破竹の勢いを見せている。
日本での展開は、2005年から始まった
BYDの日本法人である、BYDジャパンは2005年に設立しており、ソーラーパネルや産業用の蓄電システムなどの環境エネルギー事業のほか、EV事業などを展開しております。
EV事業では、主にEVバスとEVフォークリフトを手掛けており、2015年に初導入しており、現在は北は岩手県、南は沖縄県まで公共交通用途などで65台の納入実績を持ち、国内EVバスのシェアは約70%を占めている。
さらに、EVフォークリフトは物流業界、機械・製造業界、製紙業界など、約400台の納入実績を持っています。
日本の自動車市場参入にあたり、BYDの創業者であり、現BYDグループ会長の王伝福氏は、「日本とは1999年に二次電池事業を展開したことで関係がスタートし、その後も蓄電池や太陽光発電製品を提供しています。
2015年に京都にEVバスを初めて納入して以来、7年間で福島、東京、大阪、長崎、沖縄などの都市で運行し好評をいただいております。
世界的な技術革新と産業構造の変化という新しい潮流の中で、EV化の方向性は確実で、この流れは不可逆的です。
BYD(Build Your Dreams)は名前の通り、クリーンな社会を実現するという夢を27年間掲げ続け、バッテリ、モーター、電子制御、および車載用チップなど産業チェーン全体のコア技術を網羅し、現在BYDのEVバスは世界70以上の国と地域、400以上の都市に導入されています。
今年は上半期だけで64万台のEVを販売し、前年比300%以上の伸長となっています。
また、今年3月から内燃エンジン車の生産を廃止し、EVとPHEVに注力すると発表したことに加え、世界の自動車メーカーとも綿密に連携してより魅力的なEVを開発していきます。
日本の皆さまに最先端の技術、優れた製品、高品質なサービスを提供し、新しいグリーンモビリティ体験を生み出して参ります」と、発表会にてコメントを寄せている。
乗用車販売専用の「BYDオートジャパン」を設立
日本の乗用車市場参入にあたり、販売からサービスまで担う専門会社である「BYDオートジャパン」を新たに設立しました。
BYDが手掛けるEVの特徴について、BYDジャパン執行役員兼BYDオートジャパン代表取締役社長の東福寺厚樹氏は、「バッテリメーカーでもあるので、モーターや制御装置など、EVのコア技術の開発が自社で可能なこと、特に熱安定性の高いリン酸鉄リチウムイオンバッテリを使用した独自の『ブレード(刀)バッテリ』を採用し、安全性と強度に優れている。実際にバッテリにとって最も過酷なテストである釘刺し試験において、温度上昇が少なく発火もせずと、高い安全性が証明されています」と、技術力と安全性の高さをアピールしました。
その、ブレードバッテリについては、バッテリセルそのものをバッテリパックの1つの構成部品とすることで、空間利用率を従来比50%改善に成功している。
安全性を保ちつつエネルギー密度を高め、航続距離も大幅に向上させている。
ブレードバッテリを採用した専用の「eプラットフォーム3.0」は、縦横方向をフレキシブルに長さを調整できるのも特徴で、今回日本に導入される3台すべてに採用されているという。
尚、バッテリの保証期間は8年、15万kmに設定されており、長寿命かつ安全面でも高いレベルを実現している。
また、車両販売について東福寺厚樹氏は「ネットで購入できる時代とはいえ、クルマは家の次に高額な買い物なので、誰だって慎重になるし、やはり実際に触れてみなければよさは伝わらない。」と考えていることから、日本国内では2025年までに100店舗のディーラー網の構築を目指しており、これにより購入だけでなく、購入後のサポートまで充実したサービス体制を構築し、安全と同時に安心も提供するとしている。
2023年中に、順次導入される3車種とは
ミドルサイズSUVの「ATTO 3(アットスリー)」
日本市場に導入される1番最初の車種は、ミドルサイズSUVである「ATTO 3(アットスリー)」という車種で、2023年1月に発売を予定していて、価格や販売方法は2022年11月頃に発表予定となっている。
ATTO 3という車名は、物理学において測定可能な最も短いスケール「アト秒(ATTOSECOND)」から取り、俊敏で若々しいアスリートのようなスタイルと走りを実現している。
インテリアはフィットネスジムをモチーフに、ファッショナブルにまとめつつ、パノラマルーフを採用することで、解放感のある車室内に仕上がっていると言います。
パワートレインは、フロントにモーターを備えた前輪駆動モデルとなっており、モーターのスペックは最高出力150kW(204PS)、最大トルク310Nmとなっており、0-100km/hは7.3秒をマークしている。
ブレードバッテリは、フロア下に横向きに122枚搭載しており容量は58.56kWhで、満充電での航続距離は485km(社内データ)を誇る。
ボディサイズは、全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mm、ホイールベースは2720mm、車重1750kgとなっている。
最小回転半径は5.35mと狭い道路のある日本でも扱いやすい仕様となっている。
ボディカラーには「サーフブルー」「スキーホワイト」「パルクールレッド」「ボルダーグレー」「フォレストグリーン」の5色展開となっており、アクティブさを連想させるカラー名称を採用しているのが特徴となっている。
コンパクトカーの「DOLPHIN(ドルフィン)」
次いで、2023年中旬導入予定となっているのが、コンパクトカーである「DOLPHIN(ドルフィン)」だ。
インテリアには、その名の通りイルカをモチーフとなっており、ドアノブには「胸鰭(むなびれ)」のような形状をしているのが特徴的だ。
パワートレインはATTO 3と共有しており、ブレードバッテリの搭載向きや枚数も同じで、モーター出力も同じ150kwとし、フロントモーターの前輪駆動となっている。
ボディサイズは、全長4290mm×全幅1770mm×全高1550mm、ホイールベースは2700mmとなっており、ATTO 3より一回り小さいモデルとなっているが、ホイールベースは20mm差となっており、広い車室空間を確保している。
全高が1550mmと、機械式立体駐車場にも対応しているのが、日本市場でもウケそうだ。
ハイエンドセダンの「SEAL(シール)」
2023年下半期に発売を予定している、ハイエンドモデルセダンの「SEAL(シール)」は、「海豹(あざらし)」の意味となっており、コンパクトカーのドルフィンと同じく海洋美学をデザインコンセプトに取り入れている。
ボディサイズは、全長4800mm×全幅1875mm×全高1460mm、ホイールベースは2920mmのロングホイールベースを生かし、スポーティ且つエレガントなデザインに仕上がっている。
パワートレインは、フロント160kW、リア230kWのモーターを搭載し、ブレードバッテリは、ATTO 3やドルフィンとは異なり、縦方向に85枚×2列の計170枚で電池容量は82.56kWhを誇る。
航続距離は555km(自社データ)とロングドライブも余裕となっている。
さいごに
BYDの本格参入により、欧州市場はもちろん日本市場においてもEV化が激化するのは必至だ。
筆者が思うの事だが、EV車がスタンダードになっていく流れができても、運用していくインフラや利便性などの整備がしっかりしないとユーザーの購入意欲は上がっていかないと思う。
しかし、このようなBYD社のように、EV車を運用するにあたってのユーザーの漠然とした不安を解消できるのであれば、国内メーカーのEV化も急速に進化するであろう。
BYDが考える、ユーザーの不安を解消する動きに目が離せないだろう。
この記事の参考URL:https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1427032.html
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