2022年9月5日、静岡県牧之原市のこども園の通園バスの中で意識不明の園児の女の子が見つかり、その後病院で熱中症が原因とし、死亡が確認される痛ましい事件は皆さんの中で記憶に新しいかと思われます。
こういった事故は、稀のケースではなく2021年7月にも福岡県中間市でも保育園に通う男児が、登園の朝に通園バスに取り残され夕方まで発見されず、熱中症によって命を落としてしまう事故が起きています。
このように、毎年のように起きている悲痛な死亡事故が報道されるのにも関わらず、具体的な予防策というものが出てこないのが現状である。
しかし、この様な事故を鑑みて各メーカーが、「車内置き去り防止装置」の開発に本格的に着手している流れができつつある。
今回は、車内置き去り防止装置についてお話します。
車内置き去りは車両側のシステムで防止
車内置き去りに対する技術的な予防策としては、車両側のシステムを通じた注意喚起が考えられます。
実は、現状においてもその様なシステムは開発されており、欧米においてはすすでに、「CPD(Child Presence Detection:幼児置き去り検知システム)」の搭載をメーカーの責務とする動向が強まっている。
「CPD」とは、どの様な装置なのか?
「CPD」とは、車載センサーなどによって車内への置き去りを検知し、警告音などでドライバーに知らせるシステムの総称である。
現在、米国では新型車へのCPD搭載を義務化する法案が審議中となっており、欧州においては新型車両の安全性能評価を行う「ユーロNCAP」の評価基準として、CPDに関する項目が2023年から導入される見込みである。
国内におけるCPDの普及状況とはどのようになっているのか?
トヨタ・ホンダ・日産の3社に現状と今後の展開予定について尋ねたところ、トヨタはシエンタ、ヤリス、ハリアーなど、ホンダはヴェゼルやHonda e、N-ONEといった車両に同機能を搭載しており、今後も搭載車種を拡大していく意向であることが分かった。
日産に関しては現状、国内の導入モデルがなく、今後については「検討中」とのことであった。
国内メーカー各社の日米ラインナップを比較すると、米ではCPDが搭載されている車種でも、日本向けモデルには導入されていないケースが見られる。
今のところ、国内での導入例は一部メーカーの最新車種に限られており、業界を通じての積極性は薄いと言える。
自動車のセキュリティや電装部品を供給するメーカーによって、車内置き去り防止システムの開発が活発化
自動車メーカー自体の、CPDの導入が消極的である中、クルマのセキュリティや電装部品を作っているメーカーの車内置き去り防止システムの開発、販売が急拡大している。
各メーカーの、車内置き去り防止システムについて紹介します。
加藤電機:「BS-300S」・「BS-500G」
カーセキュリティシステム「ホーネット」でおなじみの加藤電機から、子供の置き去り防止に効果的なホーネット車内置き去り防止システム「BS-300S」と、緊急通報・GPS機能を搭載した「BS-500G」の2機種を10月7日に発売する。
開発した「ホーネット車内置き去り防止システム」は、小さな子供が座席の下にもぐり込んだり、横になったりと、常に目視での確認がかかせないことから、車両のエンジン停止後にブザーを自動的に発報します。
このブザーを解除するためには、車両後部に設置する専用のリモコンスイッチを操作しなければならず、運転者やスタッフを最後部座席まで移動するように促し、座席や車内の目視確認を習慣づけ、アナログ的にヒューマンエラーを防止する安全確保の仕組みを構築させるとしている。
また、車内に超音波センサーや振動センサーを設置することで、万が一見落とした場合でも、人の動きや振動があればセキュリティアラームが鳴って知らせる二重の安心機能も搭載している。
高機能モデルである「BS-500G」は、アラームに連動した緊急通報メールを最大5か所まで送信できるほか、車内の温度通知やGPSによる位置情報が確認できるなど、車両の情報が手元のスマートフォンやパソコンなど、モバイル機器で管理できるデジタルシステムを標準搭載し、より効果的で確実な車内置き去り防止システムとなっている。
さらに、盗難防止用のカーセキュリティも付随している優れものだ。
価格は設置工事費別で、「BS-300S」が5万8850円、「BS-500G」が8万5800円(初期登録料と1年分の通信利用料金を含む)
出典:https://www.kato-denki.com/
TCI:「SOS-0001」
大阪に本社を置く、TCIはバス車内置き去り防止装置「SOS-0001」を開発し、10月3日に発売します。
AIカメラを車内に搭載し、人間を検知すると大音量ブザーで車外に警告音を発する機構になっており、車両のエンジンが停止した60秒後から起動することで、車内に取り残された人間を検知する装置となっている。
「SOS-0001」のシステムは、エンジン停止した60秒後にバッテリーで起動し、AI(人工知能)カメラシステムが立ち上がります。
カメラが「人間の姿(幼児も含む)」を認識・判断すると、大音量の警告音を発する。
警告灯も発光して、より確実に置き去りを防止する。
人間の姿を感知しない場合、約60分でシステムは自動に停止する。
と言った流れだ。
1台のモニターにカメラを4台まで接続でき、複数のカメラを設置することで死角を減らせる他、カメラは赤外線ランプを搭載し、暗闇においても8~10mの視認性を持ちます。
オプションで、60mまで通信可能な遠隔ブザーも導入でき、職員室や教室内など、車両から離れた場所でもブザーを検知できるシステムも用意している。
本体価格は55万円(税別)、取付工賃は7~10万円ほどで、別途出張費用が発生する可能性があります。
出典:https://www.tci-car-item.com/
村田製作所:「Wi-Fiの電波を活用したCPD」
村田製作所が開発するCPD機能は、車室内で電子機器とクルマをつなぐ手段として活用されていたWi-Fi(無線LAN)の電波を活用して、子供の存在を確実に検知できる技術をOrigin Wireless社と共同で開発し、提供している。
そのシステムとは、車室内を飛んでいるWi-Fi電波のマルチパス波の変動を検知して、子供の動きを検知しています。
車室内に電波を送信する機器と受信する機器を、それぞれ離れた場所に設置しておき、送信側から受信側に電波が飛ぶ際、車室を取り囲むボディや車室内のシートなどさまざまなモノで電波が反射し、電波が飛ぶパス(経路)がたくさんできます。
そうしたマルチパスの合成波は、室内に動くモノがなければ、ずっと安定した信号になります。
ただし、車室内に人がいて動けば、合成波の振幅は変動するので、この変動量を解析して人の存在を検知するシステムになっている。
検知する制度に関しては、頭が数cm動くレベルや、呼吸している様子でさえ検知することが可能で、電波は車内のあらゆる場所に行き届くため、子供が毛布などを被っていても電波は透過するので、見逃すこと無く検知が可能である。
出典:https://article.murata.com/ja-jp
さいごに
毎年のように起きている痛ましい事故は、やはり人間のミスから起こるものです。
誰でも失敗はありますが、死亡事故などは絶対に起こしてはならない取り返しのつかない失敗です。
今回ご紹介したシステムは、非常に合理性が高く、何も付いていない状態と比べると圧倒的にCPDを装着したほうがミスは防ぎやすくなる。
静岡県牧之原市で起きた事故後、各保育園や幼稚園ではバスに取り残された場合、クラクションを鳴らして周囲に気づいてもらえるようにする訓練が行われていたが、実際にその様な状況になった時に未就学児が、しっかりその行動が行えるのかも実際には怪しい。
きっと、暑さとパニックでそこまで行動できない可能性もあると思います。
デジタル技術の進歩によって、大切な命が未然に防げるわけですから、幼児を乗せるバスには何かしら対策を取ると考える園も増えてくると思うので、ぜひこういった対策アイテムを活用して頂きたい。
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