自動車には2WDと4WDがあり、2WDはTwo Wheel Driveの略になっており、前輪か後輪のどちらか2輪が駆動するシステムで、4WDはFour Wheel Driveの略で前後の4輪全てを駆動するシステムになっています。
※昨今は、AWD(All wheel Drive)とも言われます。
4WDシステムを搭載しているクルマは、悪路やオフロードでも力強く走行できる「高い走破性」や、雨天や積雪時など、滑りやすい路面でもスリップしにくい「高い走行安定性」、発進時や加速時における「優れた加速性能」などがメリットとして挙げられます。
しかし、メリットがあればデメリットもつきものです。
4輪すべてに駆動力を伝えるため、システム自体が重く、駆動ロスが発生しやすく「燃費が悪化」したり、プロペラシャフト、ディファレンシャルギア、トランスファーケースなどが含まれるため、「車両重量が大きく」なったり、2WDモデルに比べて4WDモデルは構造が複雑であり、製造コストが高くなるため、「購入価格も割高」となったりと、様々なデメリットもあります。
そんな4WDシステムにも、各メーカーによって「特徴」があります。
今回は、各メーカー(スバル・マツダ・三菱・スズキ・ダイハツ)の4WDシステムの特徴を紹介します。


各メーカー(スバル・マツダ・三菱・スズキ・ダイハツ)の4WDシステムの特徴
スバル

シンメトリカルAWD(Symmetrical AWD)
スバルは全車種(一部除く)にAWD(All Wheel Drive)=全輪駆動システムを採用していることで知られており、天候や路面状況に左右されない圧倒的な走行安定性と安全性を実現しています。
その技術の中心にあるのが、「シンメトリカルAWD」という独自のレイアウトです。
シンメトリカルAWDは、スバル独自の左右対称レイアウトで、エンジン・トランスミッション・ドライブシャフトなどを車体中央に一直線に配置し、重心が低く、左右バランスに優れるため、優れた走行安定性と操縦性を実現しています。
シンメトリカルAWDを採用しつつ、車種やミッション形式によって数種類の制御方式が使い分けられています。
・アクティブトルクスプリットAWD
主に中排気量車(インプレッサ、フォレスター等)に採用されているアクティブトルクスプリットAWDは、通常は前輪寄り(60:40)の駆動力で走行し、加速、登坂、旋回などの走行状態に合わせてリアルタイムにトルク配分をコントロールします。
前輪のスリップを検知したときは、後輪へのトルクを増やして駆動力を確保できるよう制御します。
一部車種には、VDCからのハンドル角、ヨーレート、横加速度信号などの車両情報をモニターすることでより緻密なトルク配分を実現する新制御を採用しています。
・VTD-AWD(Variable Torque Distribution AWD)
大排気量車や高性能CVT車(WRX S4)に搭載されるVTD-AWDは、シンメトリカルAWDによる基本的な走行安定性を維持しつつ回頭性を高め、積極的でスポーティな走行を可能にしたAWDシステムです。
通常後輪寄り(前45:後55)のトルク配分が基本で、後輪により大きなトルクを分配することによって、コーナーでのスムーズなハンドリングを実現します。
また、走行状況に合わせてトルク配分を連続可変制御することにより、直進時の安定性も高度にバランスさせています。
・DCCD-AWD(Driver’s Control Center Differential AWD)
WRX Stiなどに搭載された最もスポーツ志向なAWDがDCCD-AWDです。
より良く曲がり、より速く走る。といった、まさに「意のまま」のドライビングを目指した電子制御AWDシステムで、前41:後59を基本にトルクを不等配分しています。
遅れのないリニアな制御が可能なトルク感応機械式LSDと、緻密な制御が可能な電子制御LSDを組み込むことにより、より大きな駆動力を発揮しながら高い安定性を確保しています。
また、ドライバーの好みやシーンに応じて電子制御LSDの効き具合を任意で設定することが可能です。
・ビスカスLSD付センターデフ方式AWD
スバルのAWDシステムで唯一電子制御を用いていない、最もベーシックなシステムです。
駆動力を最大限に引き出す前50:後50を基本にトルク配分を適正化し、安心感のある走りからスポーティなドライビングまでオールマイティにカバーします。
メカニカルならではのリニアで自然なフィーリングにより、クルマを操る歓びをより深く味わうことができます。
マツダ

i-ACTIV AWD(アイ・アクティブ・エーダブリュディー)
i-ACTIV AWDは、ドライバーの意図や路面状況を事前に予測し、賢くトルク配分を制御する「予測制御型」AWDシステムです。
単なる悪路走行用ではなく、「どんな路面でも人馬一体の走りを楽しむ」ために開発され、走行安定性・ハンドリング性能・燃費性能のすべてを高次元でバランスしています。
通常は燃費に優れる前輪駆動ベースで走行し、必要に応じて、後輪に最大50%の駆動力を配分(前100:後0~前50:後50)します。
27種類以上のセンサーを使って、タイヤの滑りを「予測」してAWDを制御します。
ハンドル角、アクセル開度、ブレーキの状態、気温、ワイパー作動の有無、横Gなどを検知し、たとえば「ワイパーが作動している=雨」「外気温が低い=路面凍結の可能性」といった状況判断から、滑る前に4WDを作動させて安定性を確保します。
「走る歓び」を損なうことなく、あらゆる路面で快適かつ安心な走行体験を提供する、非常にバランスの取れた4WDシステムです。
特に「天候が変わりやすい地域」や「ドライビングフィールを重視する人」には、非常に魅力的な選択肢です。
三菱

S-AWC(Super All Wheel Control)
S-AWCは、三菱が誇る電子制御4WDの集大成ともいえるシステムで、「単なる4WD」ではなく、車両の動きをトータルで制御する統合運動制御システムです。
4つの主要技術を統合してます。
・AYC(アクティブヨーコントロール):左右輪の駆動力を制御して旋回性アップ
・ASC(アクティブスタビリティコントロール):スリップ防止や安定性向上
・ABS(アンチロックブレーキシステム):制動時の車体安定
・ACD(アクティブセンターデフ) or 電子制御カップリング:前後トルク配分を最適制御
旋回・加速・制動のすべてで車両挙動を制御し、オンロード・オフロード問わず優れた安定性と操作性を実現しています。
電子制御4WD
ドライバーの選択に応じて、FF(前輪駆動)/4WD(自動切替)/4WDロックをモードで切替可能です。
通常は燃費重視で前輪駆動、路面状況に応じて後輪に駆動力を自動配分します。
スーパーセレクト4WD-Ⅱ
本格クロカンのトラクションと乗用車のハンドリングを両立する三菱自動車独自の4WDシステムです。
濡れた路面でも優れた安定性を発揮する4H(フルタイム4WD)や深雪路、砂地、泥ねい地で駆動力を路面に伝える4HLcなど4つのモードを大型のダイヤルで直感的に選択でき、様々なシーンで安定した走りを実現します。


スズキ

パートタイム4WD(副変速機付き)
パートタイム4WDは、路面状況などに応じて2WDと4WDを任意に切り替えて走行できます。
その際、2H(2WD)、4H(4WD高速)、4L(4WD低速)のモード切り替え操作を行なうのが副変速機です。
4Lは急な登坂路や悪路の走破性を高めるために、通常の約2倍の駆動力を発揮します。
電子制御に頼らず、オフロードファンからも支持が厚い伝統的な仕組みになっています。
ビスカスカップリング式フルタイム4WD
基本は前輪駆動(FF)で、タイヤが空転すると後輪に駆動力を自動で配分します。
ビスカスカップリングが前後輪の回転差を感知して滑らかにトルクを伝達します。
機械的なシステムでコストと燃費に優れ、メンテナンスも少なく、シンプルで信頼性の高いシステムです。
電子制御4WD
燃費と走破性のバランスに優れたAWDです。
通常は前輪駆動ベースで燃費を優先し、滑りを検知すると自動的に後輪にトルクを配分します。
もちろん悪路ではしっかり4WDとなります。
ダイハツ

ビスカスカップリング式フルタイム4WD
通常は前輪駆動(FF)で走行し、前後輪の回転差が発生したときに、自動的に後輪へトルクを伝達します。
ビスカスカップリングが滑りを感知し、前後のトルク配分を補正します。
構造がシンプルでメンテナンス性が良く、低燃費なのが特長です。
電子制御式4WD
通常は2WDで走行し、路面状況に応じて駆動力を制御する4WD AUTO、農地や山の未舗装路で力を発揮する4WD LOCKに切り替えが可能です。
ドライバーがスイッチで選択することが可能なので、路面状態やシーンに合った走行モードが選択できます。
さいごに
以上が、スバル・マツダ・三菱・スズキ・ダイハツの4WDシステムの紹介でした。
一概に4WDと言っても各メーカーの技術力が詰まった、様々な方式を取った4WDシステムがあり、走破性や燃費性能の向上を求めているものまで優秀な4WDシステムばかりでした。
居住地域の違いで4WD装着車を選択するしないはあると思いますが、雨などでも威力を発揮する4WDは安全性に富んだシステムです。
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