2024年10月29日、政府は運転免許証とマイナンバーカードを一体化した「マイナ免許証」を2025年3月に導入すると閣議決定しました。
そして、当初3月とアバウトながら予定されていたものが、2025年3月24日からマイナ運転免許証が運用されることになりました。
マイナ免許証になることで、どんなメリットやデメリットがあるのか?
今回は、マイナ免許証について解説します。


マイナ免許証とは?

マイナ免許証とは、免許情報が記録されたマイナンバーカードのことです。
道路交通法の改正により、マイナンバーカードと運転免許証の一体化に関する規定が整備され、全国で「マイナ免許証」の運用が開始します。
希望する場合は、運転免許証に代わり「マイナ免許証」を所有することが可能です。
マイナ免許証を保有するかは任意、運転免許証との2枚持ちも可能

マイナ免許証の運用が始まるとはいえ、保有するかはユーザーの任意となっています。
マイナ免許証の運用が始まると、以下のような3つの持ち方が可能となります。
1.マイナ免許証のみを保有する(従来の運転免許証を返納)
2.従来の運転免許証とマイナ免許証の両方を保有する(2枚持ち)
3.従来の運転免許証のみを保有する
1の場合は、本人確認書類が1枚に集約されるため、管理が容易になることがメリットになります。
ただし、現状ではマイナ免許証のみを保有する場合、カーシェアリングサービスを利用できなくなるおそれもあります。
一般的にカーシェアリングサービスの会員登録時や免許更新時にはスマートフォンで運転免許証の画像をアップロードする方法が採用されていますが、マイナ免許証には免許情報が一切記載されておらず、この方法を利用できないため、利便性の高いカーシェアリングサービスが受けられないデメリットがあります。
2の場合は、いずれかを紛失した場合にもう1枚を使える点や、従来の運転免許証によって券面からも免許情報を確認できる点などが挙げられます。
ただし、2枚持ちのデメリットとしては、更新の手間が増える点や、更新時の手数料が高くなる点などが挙げられます。
マイナ免許証を取得するメリットとは?

マイナ免許証を取得することには、主に以下のメリットがあります。
1.住所や氏名を変更する際の手間が省けるようになります。
従来は、運転免許証に関する住所や氏名の変更手続きは、運転免許センターか警察署で行う必要がありました。
住所や氏名が変わった場合は、住民票などに関して市区町村役場でも変更手続きを行う必要があるところ、運転免許証に関する変更手続きと二度手間になってしまってました。
そこで、マイナ免許証を保有していれば、住所や氏名の変更手続きは、市区町村役場において一括で行うことができます(住所変更手続等のワンストップサービス)。
従来の運転免許証を保有しなければ、運転免許センターや警察署で変更手続きを行う必要がなくなり、手続きの手間が省けます。
なお、住所変更手続等のワンストップサービスを利用するには、マイナンバーカードへの免許情報の登録に加えて、マイナポータルとの連携手続きが必要です。
2.更新時講習をオンラインで受講できる(優良運転者・一般運転者)
従来の運転免許証については、講習区分に応じて、運転免許センターまたは警察署で更新時講習を受ける必要がありました。
更新時講習の時間帯はあらかじめ定められているため、決まった時間に集合しなければなりません。
また、警察署に足を運ぶために時間や費用もかかります。
しかし、マイナ免許証を保有し、かつ「優良運転者」または「一般運転者」に該当する場合は、運転免許の更新時講習をオンラインで受講できるようになります。
オンライン講習であれば、受講する時間や場所を自由に決めることができ、警察署へ足を運ぶ必要もありません。
ただし、初回更新者講習と違反運転者講習は、従来どおり運転免許センターで受講する必要があります。
また、優良運転者と一般運転者についても、オンラインで完了できるのは講習の受講だけです。
視力検査や写真撮影などは、運転免許センターまたは警察署で行わなければなりません。
どちらにせよ、結局運転免許センターや警察署に出向かなければならないので、メリットとしては少ないかもしれません。
3.居住都道府県外での更新手続き(経由地更新)が便利になる
居住地以外の都道府県において、運転免許の更新を受けることを「経由地更新」といいますが、マイナ免許証を保有する場合は、従来の運転免許証に比べて、経由地更新の手続きが下表のとおり便利になります。
従来の運転免許証 | マイナ免許証 | |
経由地更新の対象者 | 優良運転者のみ | 優良運転者と一般運転者 |
経由地更新ができる期間 | 更新期間初日から誕生日まで | 更新期間初日から有効期間の末日まで |
住所地における免許証の作成 | 必要 | 不要(即日で更新手続きが完了する) |
4.新規取得手数料・更新手数料・講習手数料が安くなる
マイナ免許証の導入に伴い、運転免許に関する手数料が改定されます。
マイナ免許証のみを保有する場合は、従来の運転免許証に比べて、新規取得手数料・および更新手数料が下表のとおり安くなります。
2025年3月23日以前 | マイナ免許証のみ | 従来の運転免許証のみ | 2枚持ち | |
新規取得手数料 | 2050円 | 1550円 | 2350円 | 2450円 |
更新手数料 | 2500円 | 2100円 | 2850円 | 2950円 |
また、運転免許を更新する際の講習手数料も、オンラインで受講する場合は安くなります。
講習の種別 | 講習手数料 |
対面講習 | 優良運転者講習:500円 一般運転者講習:800円 初回運転者講習:1400円 違反運転者講習:1400円 |
オンライン講習(優良運転者・一般運転者のみ) | 200円 |
マイナ免許証を取得した場合のデメリットとは?

マイナ免許証を取得することには、主に以下のデメリットがあります。
1.券面に免許情報(免許種別・有効期間など)が表示されない
マイナ免許証の券面には、免許種別や有効期間などの免許情報が表示されるわけではなく、あくまでも、マイナ免許証のICチップに免許情報が登録されるだけという状態です。
したがって、マイナ免許証の券面を提示しただけでは、その人が運転免許を保有しているかどうか分かりません。
行政機関や、警察官に免許証の提示を求められた場合は、免許情報を読み取る専用機器で表示できるため問題ないですが、カーシェアリングサービスやレンタカーを利用する際には、業者が専用読み取り機を持っていない場合があるので、不便に感じる場面があるかもしれません。
2.紛失すると、再発行に時間がかかる
従来の運転免許証は、運転免許試験場や運転免許センターなどで手続きを行えば、原則として即日で再発行を受けることができます。
マイナ免許証は、従来の運転免許証に比べると、紛失後再発行が完了するまでに時間がかかってしまいます。
マイナンバーカードの再発行には、通常時で1~2カ月程度の期間がかかります。
緊急の場合には再発行に要する期間が短縮されることもありますが、それでも最低5日程度はかかります。
自動車を運転する際には、その自動車に関する免許証を携帯していなければならなく、免許証を携帯せずに自動車を運転した場合は、反則金や罰則の対象となります。
したがって、マイナ免許証を紛失してから再発行を受けるまでの期間は、自動車を運転することができませんので、生活や仕事などで自動車を運転する必要がある方にとっては、マイナ免許証の大きなデメリットと言えるでしょう。
マイナ免許証を取得するための手続き
マイナ免許証を取得するためには、運転免許センター等で手続きを行う必要があります。
窓口で申請書などを提出すると、マイナンバーカードに免許情報を登録してもらうことができます。
マイナ免許証の申請に関する手続きの詳細は、各都道府県警察によって今後公表される見込みです。
混雑緩和などの観点から予約制を導入する都道府県もあると思われるので、警察が公表する情報を確認しましょう。
また、住所変更手続等のワンストップサービスを利用するには、マイナンバーカードへの免許情報の登録に加えて、マイナポータルとの連携手続きが必要になります。
マイナポータルとの連携手続きの詳細については、マイナポータル上または各自治体の窓口などでご確認ください。
さいごに
以上がマイナ免許証に関する情報です。
振り返ると、マイナ免許証を取得するにあたり、メリットとデメリットが極端に出ていると感じました。
大まかにまとめると、メリットは時間やお金のランニングコストを抑えられることができ、デメリットは利便性が削がれてしまうことかと思いました。
あとは、これまでのマイナンバーカード自体における不祥事などを考えると、取得を躊躇する方も多いかもしれません。
ただし、この制度が決定した以上、今回記したデメリットが覆るようにインフラの整備によって改善するかもしれませんので、そのタイミングを見計らってマイナ免許証に切り替えるという手もあるでしょう。
いずれにせよ、メリットが多いようになっていくのに期待したいです。


コメント