ホンダ レジェンド【Legend(DAA-KC2)】は、ホンダ初のV型6気筒エンジンを搭載し、3ナンバー仕様車も用意されたホンダのフラグシップカーとして登場した。
取扱販売店は高級車を扱うクリオ店(のちのカーズ店)の専売であり、ターゲットは富裕層向けの中高年等で、中型セダンに対抗する車種として開発され、駆動方式が異なるものの最高クラスに位置付けられていた。
今となっては、セダンのイメージが強いレジェンドだが、初代モデルではハードトップクーペ、2代目には2ドアクーペのラインアップもあった。
フラッグシップカーに2ドアクーペのラインアップをさせるのはメルセデス・ベンツのSクラスクーペがあるように、贅沢な仕様となっている。
レジェンドは最盛期の1991年(平成3年)には約1万9,000台を販売し、初代からの累計販売台数は10万台強に達したものの2011年(平成23年)には年間販売台数が360台に留まり、それまで生産していた埼玉製作所狭山工場は、2012年(平成24年)6月にレジェンドの生産を終了することになった。
しかし、2014年11月10日にハイブリッド専用車として復活することを発表し、翌2015年2月20日より発売された。
一度は、幕を閉じたものの復活したことにより往年のファンは喜んでいたに違いありませんね。
5代目となって生まれ変わった、レジェンドの魅力について迫る。
ホンダ レジェンドの価格は
Hybrid EX | 720万5,000円 | 4WD |
追記:自動運転レベル3 型式指定を国土交通省から取得。世界初をレジェンドへ搭載
2020年11月11日、Hondaは自動運転レベル3に求められる国土交通省の型式指定を取得しました。
これにより高速道路渋滞時など一定の条件下で、システムがドライバーに代わって運転操作を行うことが可能となります。
今回認可を取得した自動運行装置(Traffic Jam Pilot[トラフィック・ジャム・パイロット])レジェンドに搭載し、本年度内の発売を予定している。
国土交通省は自動運転レベル3の市場化に向け、道路運送車両法の一部を改正し2020年4月1日より改正法(令和元年法律第14号)を施行しました。
改正法では自動運転レベル3の実用化に必要な自動運行装置が保安基準(昭和26年運輸省令67号)の対象装置として新たに加えられた。
※自動運転レベル3とは、日本政府が定める自動運転の定義(SAEに準拠)。
一定の条件下で、システムが周辺の交通状況を監視するとともに運転操作を代行します。
システムが使用可能な条件から外れる場合は、警報を発して直ちにドライバーに運転交代をすることが求められます
自動運行装置の保安基準
自動運行装置の保安基準とは、国土交通省の2020年3月31日報道発表資料より、自動運転車に関する安全基準を策定しました!~自動運転車のステッカーのデザインも決定~より引用
性能
・走行環境条件内において、乗車人員及び他の交通の安全を妨げるおそれがないこと
・走行環境条件外で、作動しないこと
・走行環境条件を外れる前に運転操作引継ぎの警報を発し、運転者に引き継がれるまでの安全運行を継続するとともに、引き継がれない場合は安全に停止すること
・運転者の状況監視のためのドライバーモニタリングを搭載すること
・不正アクセス防止等のためのサイバーセキュリティ確保の方策を講じること等
※走行環境条件内とは、場所(高速道路等)、天候(晴れのみ等)、速度など自動運転が可能な条件で、条件はシステムの性能によって異なります。
作動状態記録装置
・自動運行装置のON/OFFの時刻
・引継ぎ警報を開始した時刻
・運転者が対応可能でない状態となった時刻等を6ヶ月間にわたり(又は2500回分)記録できること
外向け表示
・自動運転車であることを示すステッカーを車体後部に貼付(メーカーに要請)
まとめ
同装置は、型式指定にあたり国土交通大臣が付与した特定条件(走行環境条件)の範囲内で作動が可能となり、作動後、走行環境条件を満たさなくなる場合や故障発生時などにおいては、警報を発し運転者による運転操作を求めるので、運転者は過信せずに常に運転できる状況を維持する必要があるとしています。
国土交通省では自動運転車については、交通事故の削減、高齢者などの移動手段の確保、物流分野における生産性向上など、日本が抱えるさまざまな社会課題の解決に大きな役割を果たすことが期待されているとして、自動運転に係る政府全体の戦略である「官民ITS構想・ロードマップ」(ITS総合戦略本部決定)において、市場化・サービス化に係るシナリオと目標を掲げ、国土交通省を含めて官民一体となって早期実現に向け取り組んでいます。
自動運転レベル3を搭載した車両の市販化は世界初となり、今後のクルマ業界の進化の第一歩となりました。
これを機に、各メーカーがこぞって自動運転機能を持った車両のラインアップが予想されるので、技術の競争が激化しそうだ。
SPORT HYBRID SH-AWDの革新的技術による優れた走行性能
ホンダ レジェンドには3基のモーターを搭載し、フロントにはエンジンと1基のモーター、リアには左右の後輪を別々に駆動できる2基のモーターが組み合わさっている。
走行状況や路面状況に応じて、四輪駆動/前輪駆動/後輪駆動などの駆動方式をシームレスに切り替え、各輪から発生する駆動力の大小も自在に、瞬時に制御する。
このように切り替えを瞬時に行うことで、様々な場面で走行安定性や旋回性能の向上に寄与する革新的な駆動システムとなっており、ホンダのスーパースポーツNSXにもコア技術として採用されている。
旋回時に、曲がろうとする方向の外側の後輪に力を多くかけ、クルマ自身に旋回力を起こさせることで旋回性能の向上に寄与している。
思い描いた進路に極めて忠実に、高い安定感と一体感を持って曲がれるオン・ザ・レール感覚を実現し、さらに「クルマを曲げながら、より強く押し出す」制御へと進化したことで、ワインディング走行や追い越し加速時などでの瞬発性、操舵のレスポンスとナチュラルさをより高めている。
正に、電子制御のかたまりで瞬時に道路状況や運転者の命令に従い、気持ちよくコーナリングを生み出すシステムは凄いの一言です。
アクセルに軽く押し付けた瞬間から、走りの予感を感じさせる
ホンダ レジェンドのエンジンには、高出力のV63.5L直噴i-VTECエンジンに上述の通り、3基の高出力モーターを組み合わせた強力なパワーユニットを搭載し、回転した瞬間から高いトルクを生むモーターの特性が走りに瞬発力を与え、発進・加速・追い越し時などでエンジンだけが動力源のクルマでは望めない素早い反応と力強さを実現させた。
トランスミッションには、動力伝達効率が高い7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)も加速力の向上を高めた。
また、DBW(電子制御スロットル)の設定でも、アクセル操作と車両の加速がシンクロする一体感を追求している。
「SPORT」モードに、ボタン1つで簡単切り替えができレスポンスを優先する走りに瞬時に移行し、モーターアシストを積極的に行い、変速制御も高回転域を積極的に使う制御に切り替え、より強力な加速を生む。
同時に駆動力配分の制御も変え、旋回の俊敏さを強調しステアリング操作、ブレーキフィールのダイレクト感も強める。
またマニュアル感覚のシフトチェンジが愉しめるパドルシフトも装備し、運転者の意のままのスポーツ走行が可能となっている。
アクセルペダルには、「リアクティブフォースペダル」を採用し、加速時は踏み込むほどに重くして加速とシンクロする一体感のあるペダルフィールを演出する。
クルーズ時は踏み過ぎの領域で重くしエコ運転をサポートし、雪上ではクルマが滑り出すアクセル開度を学習・予測し、その手前で重くして踏み過ぎを抑え、坂道発進時などで安心感のある操作を支援する。
さらに、危険時(衝突軽減ブレーキ・誤発進抑制機能・後退出庫サポートの作動時)には振動で警告し、回避操作をいち早く促す。
走りの一体感や、上質な乗り心地を追求したプラットフォームと足回りの強化
フロアなど客室を支える骨格幹部を中心に溶接とあわせ、接着剤の塗布も行い、骨格を結合している。
この手法によって、路面からの入力を骨格全体で瞬時に受け止めて剛性感を高めることで、タイヤが転がった瞬間から実感できる重厚で落ち着きのある上質な乗り味と、ステアリング操作に伴うクルマとの強い一体感を実現している。
接着剤の塗布は、レジェンド専用の特別な工程を埼玉製作所にて行っており、そこに設けられた意図した部位に正確に接着剤を塗布する専用設備を導入している。
ここで接着を行った後、溶接の工程へと進みさらに、一台一台、人の目や手を介した丹念な検査を経て、プラットフォームがつくり上げられている。
さすがは、ホンダのフラッグシップモデルに相応しい骨格へのチューニングぼこだわりが感じられる。
レジェンドに組み合わせられる、サスペンションはドライバーの操作に忠実に応え、尚且つ外乱には揺るがない安定性を発揮する懐の深さを目標に、直進安定性、操縦安定性、操舵応答性、乗り心地を追求したものを採用している。
さらに、状況に応じて減衰力を変化させ、操縦安定性と乗り心地を磨く振幅感応型ダンパーも採用しており、よりストロークするチューニングを施し、特性を一層高めている。
剛性感を高めた骨格と相まって、路面の起伏を関節が巧みにいなすように作用し、あたかも路面に絨毯を一枚敷いたような、高品位な乗り味を実現している。
3つのモーターによる、高効率の回生を実現し最新のハイブリッドシステムとエンジンによる優れた燃費性能
ハイブリッド車は減速時、車輪の力でモーターを回して発電し、減速エネルギーを電力に変えて、回収・再利用する機構になっているが、レジェンドは発電効率の高いモーターを3つ持ち、全輪の減速エネルギーを高効率に回生する。
また、四輪駆動時、バッテリーの電力を使わず、フロントモーターで発電した電力でリアモーターを駆動する制御も可能にしている。
リアモーターだけで駆動する「EVドライブ」、モーターとエンジン両方の駆動力を使う「ハイブリッドドライブ」、エンジンのみで駆動する「エンジンドライブ」と、3つの走行モードと、前輪駆動/後輪駆動/四輪駆動などの駆動方式を自在に制御しドライバーの要求と走行状況に応じて、最もエネルギー効率のよい走行モードと最適な駆動方式を自動的に選択して走行する。
搭載されているエンジンには、全域で最適なバルブ制御を行う「VTEC」で効率を一層高め、クルーズ時など低負荷時には片側バンク3気筒を休止させ、燃料消費を抑える「VCM」も採用し、燃費性能の向上にも寄与している。
レジェンドの燃費は
JC08モード | 16.4km/L |
快適で高級感の溢れる室内空間と、大容量で便利機能を搭載したラゲージルーム
レジェンドの室内空間には、質と洗練を香らせるレザーインテリアを採用し素材には厳選された原皮を採用し、なめしと塗装工程により本革のしっとりとした風合いと触感を強調させ、人が触れる部位に適用している。
ソフトパッドには、本革の風合いを質高く表現し立体成形後、人の手によりミシンで縫製加工を施す。
プレミアムな革製品に用いられる、堅牢で斜めの模様が美しいステッチを施し、手の込んだ仕立てを演出したリアルステッチソフトパッドを採用している。
前席シートには、安心感と疲労軽減に寄与するホールド性を高めた形状になっており、高く、多面体の背もたれで上半身を一体感を持って受け止め、多層構造のクッションで適度な沈み込みを実現している。
さらに、サイドサポートについては、背もたれは高さをクッションは硬度を最適化している、スポーティープレミアムシートを装備させる。
後席には、パッケージ技術を駆使し大柄な方でもくつろげ、ロングドライブでも快適な室内空間を実現した。
特に膝前は、足を組んでも余裕のある広さを実現し、前席の下に足先が楽に入るスペースも確保するといった高級セダンらしい室内空間を生み出す。
シフト操作には、指先のわずかな動きで直感的な操作が行える、エレクトリックギアセレクターを採用している。
シフトポジションのP・N・Dは押す、Rは引くという人間の感覚にマッチした操作方法が用いられ、さらにDは、クルマの進行方向に向けて斜め前へ押す形に。
また、クルマが動くD・Rは緑、他は赤のランプが点灯するなど視覚的な判別性も追求している。
ラゲージルームには、パワートランクを採用しトランクリッド内側のクローズスイッチで自動的に閉じられる。
トランク容量は414Lの大容量を実現させ、さらにトランクアンダーボックスを備え、小物もすっきり収納できる工夫もされていて便利だ。
高い予防安全性能と、衝突安全機能で乗員や歩行者にも高い安全性をはかる
レジェンドには、対象の位置や速度の測定に強いミリ波レーダーと、対象の形や大きさの識別に強い単眼カメラを融合した高精度な検知機能で、安心・快適な運転を支援する「Honda SENSING(ホンダ センシング)」を搭載している。
ホンダセンシングの内容は
衝突軽減ブレーキ(CMBS) | 前走車、対向車、歩行者との衝突回避を支援する。 |
誤発進抑制機能 | 不注意による急発進を防止し注意を喚起する。 |
歩行者事故低減ステアリング | 歩行者との衝突回避を支援する。 |
路外逸脱抑制機能 | 車線を検知し、はみ出さないように支援する。 |
渋滞追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール) | 適切な車間距離を保ち、運転負荷を軽減する。 |
LKAS(車線維持支援システム) | 車線内を走行できるようにステアリング操作を支援する。 |
先行車発進お知らせ機能 | 停車時に、先行車が発進した事をお知らせ。 |
標識認識機能 | 標識の見落とし防止を図り、安全運転を支援する。 |
オートハイビーム | 前走車や対向車を検知してハイ/ロービームを自動で切り替えする。 |
トラフィックジャムアシスト(渋滞運転支援機能) | 高速道路などでの渋滞時、アクセル・ブレーキ・ステアリング操作を支援する。 |
レジェンドに搭載されるエアバッグは、運転席用&助手席用i-SRSエアバッグシステム、前席用i-サイドエアバッグシステム+サイドカーテンエアバッグシステム(前席/後席対応)、運転席用SRSニーエアバッグシステムと、乗員をつつむように備えたエアバッグが装備される。
万が一、歩行者との衝突時にはボンネットフードの後部を持ち上げ、歩行者の頭部への衝撃を低減するポップアップフードシステムを搭載させる。
全てにおいて、ラグジュアリー感満載のレジェンドは同クラスでの対抗馬と言っていい程の魅力を持つ
ここまで、レジェンドについて述べてきたが個人的には非常に魅力的なクルマであると思う。
ボディの寸法は、先代より一回り大きくしたデザインで街で見かけたときのインパクトは大きく、さすがはホンダのフラッグシップセダンだと、その存在感は大きい。
走行性能のシステムについてもSH-AWDは相当賢いシステムだし、コーナリング時にも絶大な底力をみせる。
駆動配分を状況に応じ、変化させるので運転者は自分の運転がうまくなったと感じてしまう程の制御をみせてくれる。
内装の質感の高さや、居住空間も申し分のない大きさで乗員全員がゆったりと安心して乗れる点もポイントが高い。
しかし、ここまでラグジュアリーだが正直、レジェンドは売れていないクルマだ。
そこには、セールスポイントがSH-AWDだったりスポーツサルーンといった部分だけが突出してしまっている部分が影響していると考えられるし、高級車を扱うのに相応しい販売店の意識を高める必要があるのではないかと感じる。
せっかく、クルマ自体のレベルは高いので今後はこの伝統的なレジェンドを再燃させるマーケティングを強化していくことが課題と感じる。
この部分をクリアすれば、同クラスの車種を検討しているユーザーにも十分レジェンドという選択肢を持っても良いと筆者は思う。
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