クルマの走行中や信号待ちに他のクルマやバイクが接触して逃げられてしまったり、駐車していたクルマに戻ったら傷や凹みがあった場合で加害者らしき人物がいない。等、急に訪れる「当て逃げ」案件。
あまりに突然の出来事で頭が真っ白になってしまい、どのように対処すれば分からない。となってしまう場合がほとんどかと思われます。
ただし、しっかりと対処法を知っていれば、落ち着いて対処することが可能となります。
今回は、当て逃げにあってしまった場合の対処法、また当て逃げの加害者に問われる責任についてお話します。
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当て逃げとは?
「当て逃げ」とは、車などで物にぶつけて損害を与えたにもかかわらず、その場から何の対応もせず立ち去ることを言います。
一方、ひき逃げという言葉もありますが、こちらは車などで人にぶつけて怪我を負わせたり死亡させたにも関わらず立ち去ることを言い、当て逃げよりも、より重大な犯罪となっています。
当て逃げのよくあるケース
当て逃げは日常の中で意外と起こりやすく、被害者が気づいたときには加害者がいないということがほとんどです。
以下は特によくある当て逃げのケースです。
1.駐車場での当て逃げ

当て逃げの中でも最も多いのが、駐車場での当て逃げ被害になります。
スーパーやコンビニ、商業施設などの駐車場内でぶつけられるケースで、隣の車からドアパンチされドアに傷ができていたり、隣の車がぶつけてボディに凹みができているにも関わらず、加害車両が居ない状態です。
2.信号待ちや渋滞中の追突

停車中に後方から追突されたにも関わらず、そのまま逃げられるケースです。
特に、夜間や雨の日などの視界が悪いときに起こりやすいです。
3.すれ違い時の接触

狭い道路などで、すれ違う際にサイドミラーやボディが接触し、そのまま立ち去られるケースです。
衝突した音に気づいていても、「自分ではない」と思って逃げる加害者も居ます。
以上のようなケースで当て逃げが起きています。
当て逃げをされてしまった時の対処法とは?

車を当て逃げされたときの対処法について、落ち着いて対応できるように順を追って説明します。
以下のステップに沿って行動するとスムーズに対処することができます。
1.まずは安全確認、その場を動かない
事故現場を離れることはせず、安全な場所に停車しましょう。
そして、自身も含めてけが人が居ないか確認します。
2.警察に通報
当て逃げは、「交通事故+逃走」=刑事事件になるので、必ず警察に通報します。
警察に報告しないと加害者を特定したり検挙することができません。
また、保険を請求する際に必要な「事故証明書」を作成してもらうために、現場検証に立ち会います。
たとえ、些細な損傷でも届け出る様にしましょう。
届け出がないと保険が使えない可能性もあります。
後日、保険会社に提出する際に必要な「交通事故証明書」が発行されます。
3.証拠を確保する
車の損傷箇所や破片の位置を撮影します。
また、当て逃げをした加害者について分かることがあれば、忘れないようにメモや撮影し記録します。
車種やナンバー等が分かればよいですが、もし分からなくても車両の大きさや色、運転手や同乗者の性別や特徴など、分かる限り記録しておきます。
ドライブレコーダーが搭載している場合は、録画された動画を確認します。
また、近くに防犯カメラや他車に搭載されているドライブレコーダーがある場合は、目撃者として協力してもらうようにしましょう。
さらに、事故現場に目撃者が居た場合には、後日証言してもらえるか交渉します。
4.保険会社に連絡する
自身が加入している自動車保険会社に連絡し、状況を報告します。
保険を使用すると保険の等級がダウンしてしまうので、保険会社へ連絡しないほうがよいのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、連絡するだけで等級がダウンすることはありませんので、保険会社へ補償内容についてよく確認します。
また、ドライブレコーダーなどの証拠がある事を伝えると、保険会社が調査してくれる場合もあります。
5.けががある場合は、病院の診断を受ける
もし、当て逃げ事故によってけがをした場合は、必ず病院へ行きましょう。
当日は軽いと思っていたけがでもあとで後遺症などが出る場合もありますし、当日は動転していて、けがの程度を自覚しにくい場合もあります。
もし、けがを負った場合は物損事故ではなく人身事故になりますので、当て逃げではなくひき逃げとして扱われるので、加害者へ科される刑事罰や行政罰、損害賠償請求額も大きくなります。
また、警察は人身事故などの重要性の高い事故に関しては、より力を入れて捜査する傾向があり、検挙率も高いですから、当て逃げよりも検挙される可能性が高まります。
当て逃げの加害者(犯人)が見つかった場合
当て逃げした相手が見つかった場合は、示談交渉をして損害賠償請求を行う流れになります。
物損事故では相手の加入している保険の対物賠償責任保険が適用されるため、基本的には相手側の保険会社との交渉になります。
当て逃げ被害で請求できるものは「車両の修理費用または買い替え費用」、「代車の費用」、「積載物の損害」、「レッカー代」などが請求できます。
当て逃げに対する損害賠償請求の時効とは?
当て逃げによる損害賠償の時効については、不法行為に基づく損害賠償請求権の時効を民法は下記のように定めています。
・不法行為(当て逃げ)の時から20年間
・被害者又はその法定代理人が損害及び加害者(当て逃げした犯人)を知った時から3年間
当て逃げされてもなかなか相手がみつからない場合でも、20年間は損害賠償請求できることは覚えておくといいでしょう。
ただし、当然ですが、時間が経てば経つほど加害者の捜索は困難になりますので、当て逃げ事故の被害を把握した時点で速やかに対応を進めることが重要になります。
当て逃げ加害者(犯人)が問われる責任とは?

当て逃げをした加害者には、「刑事責任」「行政責任」「民事責任」と、3つの責任に対して処分が行われます。
大した事故ではないと自己判断し、軽い気持ちで当て逃げをしてしまうと、思いのほか厳しい処分を受けることがあります。
刑事責任処分
道路交通法では「交通事故があったとき、その当事者は直ちに車両等の運転を停止し負傷者を救護・道路における危険を防止等必要な措置をとることと、警察に報告すること」を義務としています。(道路交通法72条第1項)
当て逃げをすると、たとえ軽微な事故であっても危険防止措置義務と報告義務に違反していることになるので、下記の処分に科される可能性があります。
・報告義務違反:3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金
・危険防止措置義務違反:1年以下の懲役または10万円以下の罰金
行政責任処分
物損事故は通常、行政処分の対象ではありません。
そのため、違反点数は加算されず、免許停止や取り消しにもなりません。
しかし当て逃げに関しては7点(安全運転義務違反2点+危険防止措置義務違反5点)が加算されます。
これまで免許停止などの前歴のない場合でも30日の免許停止処分になります。
民事責任処分
当て逃げは、行政責任と刑事責任に加えて、民事責任にも問われます。
民法で定められている損害賠償責任です。
これは、故意または過失によって相手に与えてしまった損害を賠償する義務です。
例えば相手の車両にキズをつけてしまった場合は修理費用を賠償する必要があります。
損害賠償の損害には、「財産的損害(修理費用など)」、「精神的損害(慰謝料)」となります。
物損事故では通常、財産的損害の賠償責任のみ問われますが、ただし、積荷の破損や事故の影響の実際をふまえ、慰謝料が支払われるケースも稀にあります。
さいごに
当て逃げの被害にあった場合は、今回紹介した手順を落ち着いてひとつひとつこなしていくことが大切です。
できる限りの証拠を確保するのも大切ですが、もし自車にドライブレコーダーが搭載していなくても、停めている場所によっては防犯カメラが付いていないか確認したり、周囲の車にドライブレコーダーが搭載している車が居ないか確認し、協力してもらうように交渉をするのも、犯人を特定するきっかけになるかもしれません。
小さい傷で諦めたり、犯人は見つからない。と泣き寝入りするのではなく、必ず警察に通報をしましょう。
また、事故後に自分の納得いかない状況になっても、交通事故を得意とした弁護士に相談することで、最善の解決策が見つかるかもしれません。
当て逃げの被害者は、諦めることなくできる限りの対処をし、もし加害者となった場合は当て逃げはせずに、すぐに被害者と対応するようにしましょう。
当て逃げをすることで、罪を重ねることになり、取り返しのつかないことにもなりかねます。


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