クルマにとってエンジンオイル交換は、クルマを長く安全に使うために欠かせない基本的なメンテナンスのひとつです。エンジンオイルにはエンジン内部を守るさまざまな役割があり、定期的に交換することでエンジン性能や耐久性を維持することができます。
皆様もクルマのメンテナンスと言ったら、「オイル交換」が真っ先に思いつくと思いますが、エンジンオイルの種類や規格が存在していることは中々気づかないのではないでしょうか?
今回は、エンジンオイルの種類や規格についてお話します。
ムームードメインエンジンオイルの種類や規格について
エンジンオイルには粘度がある

エンジンオイルには、エンジンの性能を左右する「オイルの粘度(硬さ)」があります。
オイル缶に書かれた「0W-20」や「5W-30」といった数字は、エンジンオイルの「硬さ」を示す重要な指標で、粘度はエンジンの保護性能や燃費、さらには走行フィーリングにも影響するため、クルマに合ったものを選ぶことが大切になります。
数字が低いほど低粘度で柔らかく(サラサラ)、数字が高いほど高粘度で硬い(ネバネバ)オイルとなります。
オイルの粘度は、国際規格であるSAE粘度分類によって表されており、たとえば「0W-20」という表示は、低温時と高温時の粘度を示しています。
・0W:低温時の粘度(冬場のエンジン始動性能)
・20:高温時の粘度(エンジンが温まった状態での油膜の強さ)
「W」はWinter(冬)の意味で、この数字が小さいほど寒い環境でもオイルが流れやすく、エンジン始動時の負担を軽減します。
一方、後ろの数字が大きいほど高温時でも油膜が厚くなり、エンジンをしっかり保護する。
近年の国産車、特にコンパクトカーやハイブリッド車では「0W-20」や「0W-16」といった低粘度オイルが主流になっていて、その理由は主に燃費性能に影響するからです。
オイルが柔らかいほどエンジン内部の抵抗が減るため、燃費が向上しやすい。さらに、寒い朝でもエンジン始動直後からオイルが素早く循環するため、摩耗の低減にもつながります。
一方で、すべての車に低粘度オイルが最適というわけではなく、例えば、ターボエンジンやスポーツ走行を行う車、走行距離が多くなったエンジンには、「5W-30」や「10W-40」など、やや粘度の高いオイルのほうが油膜が厚く、エンジン保護性能が高まることもある。
エンジンオイルの粘度選びで最も重要なのは、自動車メーカーが指定する粘度を守ることです。近年のエンジンは非常に精密に設計されており、想定された粘度で性能が最大限に発揮されるよう作られています。
たとえば低燃費車では0W-20が指定されることが多く、これより硬いオイルを使うと燃費悪化やエンジン性能の低下につながる可能性もある。
しかし、近年の日本は酷暑や厳冬といった気温差が大きいので、季節によってエンジンオイルの粘度を変えるのもひとつの選択肢となります。
エンジンオイルには規格がある

エンジンオイルを選ぶ際、粘度と並んで重要なのがオイルの規格です。
規格とは、エンジンオイルの性能や品質を一定の基準で評価したもので、耐久性や清浄性、エンジン保護性能などが規定されています。
つまり規格は、そのオイルがどれだけ高い性能を持っているかを示す「品質の目安」ともいえる。
エンジンオイルにはいくつかの国際規格があり、代表的なものが次の3つだ。
①API規格

最も広く知られているのが、アメリカの石油業界団体である、American Petroleum Institute(API)が定めた規格です。
ガソリンエンジン用は「S」で始まり、「SA → SB → SC → … → SN → SP」とアルファベットが進むほど性能が新しい。
現在主流となっているのは次の規格だ。
・SN:2010年に制定された規格
・SP:2020年に制定された最新世代の規格
SPは、エンジン保護性能や燃費性能、ターボエンジンで問題になるLSPI(低速早期着火)対策などが強化されている。
②ILSAC規格

もうひとつの重要な規格が、International Lubricant Standardization and Approval Committee(ILSAC)によるものです。
これは日米の自動車メーカーが中心となって策定した規格で、燃費性能や排出ガス対策を重視している。
代表的な規格は次のとおり。
・GF-5
・GF-6A
・GF-6B
GF-6は最新世代で、エンジン保護や燃費性能がさらに強化されている。なお、GF-6Bは主に0W-16などの超低粘度オイル向けの規格です。
③JASO規格

日本独自の規格として知られているのがJASO規格です。これは日本の自動車・二輪車メーカーの実情に合わせて作られたオイル規格で、特に二輪車用オイルでは世界的にも広く使われている。
JASO規格は、日本自動車技術会(JASO:Japanese Automotive Standards Organization)が定めており、エンジンオイルの摩擦特性や清浄性、耐久性などを評価する基準として利用されている。
バイク用オイルの主なJASO分類
JASO MA:湿式クラッチ(オイルに浸かったクラッチ)を使用するバイク向け。クラッチが滑りにくい摩擦特性を持つ。
JASO MA1 / MA2:MA規格をさらに細分化したもの。特にMA2は高い摩擦性能を持ち、スポーツバイクなどで推奨されることが多い。
JASO MB:スクーターなどに多い乾式クラッチやCVT車向け。摩擦抵抗が少なく、燃費性能を重視したオイル。
JASO規格が特に重要なのはオートバイ用エンジンオイルだ。
バイクの多くは、エンジンオイルがエンジン、トランスミッション、クラッチを同時に潤滑する構造になっている。そのため、自動車用オイルとは異なり、クラッチの滑りを防ぐ摩擦性能が重要になる。
JASO規格には、四輪車向けの基準も存在します。
代表的なのが、JASO DL-1(ディーゼル乗用車向け)
これはディーゼル車の排出ガス後処理装置(DPF)への影響を考慮したオイル規格で、日本のディーゼル乗用車で採用されている。
この性能を評価するためにJASO規格が使われています。
JASO規格は、日本の道路環境や車両構造に合わせて作られているのが特徴で、特にバイク用オイルでは、世界中のメーカーがこの規格を採用しており、実質的な国際基準のひとつともいえる存在になっている。
エンジンオイルを選ぶ際は、粘度やベースオイルだけでなく、こうした規格を確認することも大切だ。特にバイクの場合は、JASO規格に適合したオイルを使用することで、クラッチ性能やエンジン保護性能を確実に維持することができます。
エンジンオイルににはベースオイルがある

エンジンオイルは一見すると単なる「油」に見えるが、その中身は大きくベースオイル(基油)と添加剤で構成されています。一般的にエンジンオイルの約70~90%を占めるのがベースオイルであり、オイルの性能の土台を決める最も重要な成分です。潤滑性や耐熱性、酸化のしにくさなど、エンジンオイルの基本性能はこのベースオイルによって大きく左右されます。
エンジンオイルのベースオイルは、主に「鉱物油(ミネラルオイル)」「全合成油(フルシンセティック)」「部分合成油(セミシンセティック)」の3つに分類され、それぞれ特徴があります。
①鉱物油(ミネラルオイル)
エンジンオイルの世界には「全合成油」や「部分合成油」などさまざまな種類が存在するが、その原点ともいえるのが鉱物油(ミネラルオイル)です。
原油を精製して作られるこのオイルは、長い間クルマのエンジンを支えてきた伝統的なベースオイルであり、現在でも多くの車で使われています。
鉱物油は、地中から採掘された原油を蒸留・精製して作られる。化学合成によって分子構造を整える全合成油とは異なり、自然由来の成分をベースにしているのが特徴だ。
精製工程を経ることで不純物は取り除かれるものの、分子の大きさは均一ではなく、この点が合成油との大きな違いとなります。
鉱物油のメリット
鉱物油が現在でも広く使われている理由は、その扱いやすさにあります。
価格が比較的安い:製造コストが低いため、エンジンオイルの中でも価格が手頃。オイル交換のコストを抑えたいユーザーには魅力的だ。
エンジンとの相性が穏やか:古いエンジンではシール材やガスケットが劣化していることも多く、洗浄力の強い合成油を使うとオイル漏れが起きる場合がある。その点、鉱物油は性質が穏やかで旧車や高走行車にも使いやすい。
十分な基本性能:日常的な街乗りや通勤など、一般的な使用環境であれば鉱物油でも十分にエンジンを保護する性能を持っている。
一方で、最新のエンジンや過酷な使用条件では弱点もあります。
高温耐久性は合成油に劣る:長時間の高速走行や高温環境では劣化が進みやすい。
オイルの性能変化が比較的早い:分子構造が均一ではないため、粘度の変化や酸化が起こりやすい。
そのため、鉱物油を使う場合は比較的短いサイクルでオイル交換を行うことが重要とされる。
現在では高性能な全合成油が注目されることも多いが、鉱物油はエンジンオイルの基本を支えてきた存在です。価格の手頃さと扱いやすさから、今でも多くのドライバーに選ばれている。
エンジンオイル選びは、クルマの性能や使い方に合わせて選ぶことが重要で、鉱物油はその中でも、もっともベーシックで実用的な選択肢として、これからも自動車ユーザーを支え続けていくだろう。
②全合成油(フルシンセティック)
近年の自動車用エンジンオイルで注目されているのが、全合成油(フルシンセティックオイル)です。
高性能エンジンやハイブリッド車、ターボ車などに広く採用されており、現代のクルマに最適なエンジンオイルとして存在感を高めています。エンジン保護性能や耐久性に優れ、厳しい条件でも安定した性能を発揮するのが最大の特徴だ。
全合成油は、原油を単に精製するのではなく、化学合成によって分子レベルから設計されたベースオイルを使用しています。
そのため分子構造が均一で、不純物も少なく、これにより、潤滑性能や耐熱性、酸化に対する強さなど、エンジンオイルに求められる性能を高いレベルで実現しています。
全合成油のメリット
高温でも性能が安定:ターボエンジンや高速走行ではエンジン内部が非常に高温になるが、全合成油は熱に強く、油膜をしっかり保つことができる。
低温でも流れやすい:寒冷時でもオイルがスムーズに循環するため、エンジン始動直後の摩耗を減らす効果がある。
エンジン内部をきれいに保ちやすい:スラッジ(汚れ)の発生を抑え、エンジン内部をクリーンに保つ性能にも優れている。
燃費向上に貢献する場合もある:低粘度オイルとの相性が良く、エンジン内部の抵抗を減らすことで燃費改善につながることもある。
最近のエンジンは、燃費性能の向上や排出ガス規制への対応のため、内部抵抗を減らす設計が進んでいる。そのため「0W-20」や「0W-16」といった低粘度オイルが多く指定されており、こうした性能を安定して実現できるのが全合成油です。
また、ターボエンジンやハイブリッド車では温度変化が大きく、オイルへの負担も大きいため、耐久性の高い全合成油が適しています。
唯一の弱点といえるのは、製造コストが高いため、価格が高いことです。
ただし、劣化しにくいという特性から、長期的にはエンジン保護や性能維持の面でメリットがあると考えるユーザーも多い。
高性能化が進む現代のエンジンにとって、全合成油は単なる高級オイルではなく、エンジン性能を引き出すための重要なパートナーともいえる存在だ。
愛車のコンディションを重視するドライバーや、ターボ車・スポーツモデルのオーナーにとって、全合成油は心強い選択肢となるだろう。
③部分合成油(セミシンセティック)
エンジンオイルには「鉱物油」「全合成油」と上記で紹介しましたが、その中間に位置するのが部分合成油(セミシンセティックオイル)です。
性能と価格のバランスに優れ、多くの市販エンジンオイルで採用されているタイプでもある。日常の街乗りから高速走行まで幅広く対応できる万能オイルとして、一般ユーザーから整備工場まで広く支持されている。
部分合成油は、鉱物油(ミネラルオイル)をベースに、全合成油をブレンドしたエンジンオイルです。
鉱物油のコストメリットと、合成油の性能の高さを組み合わせることで、両者の長所をバランスよく取り入れている。完全な化学合成オイルほど高価ではないが、鉱物油よりも性能が高く、実用性に優れているのが特徴だ。
部分合成油のメリット
価格と性能のバランスが良い:鉱物油より高性能でありながら、全合成油ほど高価ではない。コストパフォーマンスの高さが最大の魅力だ。
耐熱性・耐久性が向上:合成油成分を含むことで、高温時の安定性や酸化への強さが鉱物油より向上している。
幅広い車種に対応:軽自動車からコンパクトカー、ミニバンまで、多くの乗用車で問題なく使用できる万能型のオイルだ。
街乗りや通勤、買い物など一般的な使い方であれば、部分合成油の性能で十分なケースが多い。高速道路の走行や長距離ドライブにも対応できるため、多くのドライバーにとって実用的な選択肢となります。
一方で、サーキット走行や高負荷のスポーツ走行、ターボエンジンを酷使するような環境では、より耐久性の高い全合成油が選ばれることもある。
エンジンオイル選びは、性能だけでなくコストや使用環境も考える必要がある。その点、部分合成油は性能と価格のバランスが取れた、もっとも現実的なエンジンオイルともいえる存在だ。
エンジンをしっかり守りながら、メンテナンスコストも抑えたい。そんなユーザーにとって、部分合成油は頼れるスタンダードとして、これからも多くのクルマを支えていくことになるだろう。
さいごに
エンジンオイルは「エンジンの血液」とも呼ばれるほど重要な存在です。一般的には5,000km~10,000kmごと、または半年~1年ごとを目安に交換することで、エンジンを良好な状態に保つことができます。
エンジンオイルは種類が多く、どれを選べばよいか迷う人も少なくありません。
しかし今回解説した基本のポイントを押さえれば、愛車に合ったオイルを選ぶことはそれほど難しくありません。
エンジンオイル選びの基本は次の順番。
1.メーカー指定の粘度と規格を確認
2.車の用途に合ったベースオイルを選ぶ
3.走行環境や走行距離に合わせて調整
この3点を押さえれば、エンジンを長く快調に保つことができます。
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